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マルチプル・ラバーズ6



ふ、と、カレが目を開けると、目の前に、翡翠が広がった。
え、と、戸惑っていると、そこが、グリーンの腕の中だということに気がつく。
そして、そこが、カレの家ではなくて、グリーンの家の、リビングだということにも。


どうして、おれ、家に帰ったのに。


驚きのあまりに、無言でぱちぱちと目を瞬かせると、頭上から、はあ、と、大きなため息が聞こえてきた。


「う、わ!ごめん、グリーン、今退くから!!」
「いや、かまわない。それよりも、気分が悪いとか、そういうことはないか?」
「う、うん…それはないけど…えっと、」

じっと、その翡翠の瞳で見つめられると、なんだか、照れるな、なんて、カレは思った。
でも、この、とくとくと聞こえる、グリーンの心音は、なんだか、安心する。

カレは、瞳を、無意識に緩ませると、そのまま、すり、と、グリーンに擦りよった。
なぜだか、分からないけれども、今なら素直に、グリーンに甘えられると思った。
なぜだか、分からないけれども、グリーンが、昨日よりも、ずっとずっと、大切だと、思うようになった。

そっと、撫でられる頭に、ついさっき目覚めたばかりなのに、うとうととしてしまう。
それは、きっと、グリーンだからだ。
理由になんてなっていないのは分かるけれども、でも、きっと、そういうものなのだろう。

そこで、きぃ、と、小さな音をたてて、扉が開いたのがわかった。
そこに視線を向ければ、小さな黄色。
どこか、不安げな色を瞳にのせた、小さな相棒がいた。

「…ピカ?どうしたんだ、何か、あったのか?」

それに、さすがに意識が持ち上がり、微かにグリーンから身を起こすと、勢いよく、ピカが、カレの胸元に飛び込んできた。
そして、ぐりぐりと、胸元に頭を押し付けられる。
今では、信頼し合っている相棒とはいえ、元々はプライドの高い、このピカが、グリーンもいるのに、こんな風に甘えてくるだなんて、と、カレは目を見張ると、再度、頭の上から、大きなため息が零れ落ちてきた。

「え?…ええ!?おれ、何かした!?」
「あぁ、それはもう派手に、な。ピカはその被害者だ」
「ピカチュ…!」
「え、えええええ、ご、ごめんな、ピカ」

慌てて、ピカを抱きしめてやると、ピカは、嬉しそうに、可愛らしく鳴く。
その瞳に、もう不安の色がないと分かると、カレは、安心して、ほっと息を緩くはいた。
そして、自分を抱きしめているグリーンに振り向く。

「えっと、グリーン、そろそろ離してほしいな、なんて…」
「残念だが、それは却下だ」
「なんで!?でも、この体制はちょっと…って、ぐ、ぐり…んぅ…!!」

どくどくと、狂ったようになる心音に、そろそろ離れないと、本当に死んでしまう、と、カレが訴えるも、グリーンはまったく聞く耳を持たずに。
それどころか、そのまま、カレを食べるような勢いで、口付けてきた。
くちゅりと、混ざる、カレと彼の唾液の音に、頬が熱くなる。
ぎゅっと閉じていた瞳を、微かに開くと、グリーンの開いている方の手が、ピカの瞳を覆って、見えないようにしていたのが、視界に入った。

それから、だいぶ時間がたって。
反論する気も、食べられた後に。
息を乱すカレが、グリーンの肩に顔をうずめると、ぽんぽん、と、子どもにするように、背を優しくたたかれた。



「やっぱり、俺にはお前しかいない、な。レッド」
「…なんの、こと?」
「俺が愛してるのは、レッドだけだ、という話だ」
「………おれも、グリーンのこと、あいしてる、よ」



恥ずかしくて、小さくなってしまったその言葉に、グリーンは、満足そうに、くすりと笑った。
そして。

あいしてるって、初めて言ったな、と、レッド、は、早まる心音を鳴らしながら、思って、笑みを零した。







オリジナル
おかえり、おれが元の一人さ





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