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マルチプル・ラバーズ3






朝の光が、部屋に差し込む。
その明るさに、彼は目を覚ますと、はぁ、と大きくため息をついて、不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。


「…僕、いつ寝たんだよ…」


昨日の記憶が、あやふやな彼は、それを鮮明に思いだそうとする。
けれども、どんなに頑張っても、彼の相棒のピカチュウの様子がおかしくて、幼馴染にグリーンに見せたところまでしか、思いだせない。

そう、そこまでしか思い出せないのだ。

(結局、あいつ、ピカチュウがどうしたのかとか、何にも教えてくれなかったし)

どうして、さっさとこっちが望んでいることを伝えてくれないのか。
それに、どこか、むっと口を尖らせるも、自分の腹部に乗って、丸くなって寝ているピカチュウを見ると、それもすぐに直る。

すやすやと眠るピカチュウの背を、ゆっくりと撫でてやると、うっすらとピカチュウの瞳が開き、ぴかぁ、と、眠たそうに一鳴きする。
それの、なんて可愛らしいこと!

くすりと、彼は笑って、ぎゅう、と、ピカチュウを抱き上げた。

「おはよう、ピカチュウ」

そう言ってやると、けれども、ピカチュウは、また、しゅんと、耳を下げる。
大きなしっぽも、普段は機嫌よく揺れているのに、今はぺたりとしてしまっている。

あぁ、やっぱり、まだ本調子じゃないんだ。

寝起きも様子からだと、幾分かよくなったみたいだけれども。
もしかして、これは何か大きな病気なのかもしれない。

大切な相棒の、異常に、彼は、いてもたってもられなくなって、ばたん!と、大きな音を鳴らして扉を閉めて、家を出た。





ぎゅっ、と、その胸に、大切な相棒を抱いて。






はあ、と、息を切らして訪れたのは、マサラの地でも一際目立つ大きな屋敷、オーキド邸だ。
たしか、いつだかにグリーンと会話した時、今日は、ジムではなくてここで、博士の手伝いをすると言っていたはずだ。
なんだかんだで律義なグリーンは、きっと、もうこの中で、博士の手伝いの準備をしていることだろう。

乱れた息を整えて、彼は、ぴんぽーん、と、チャイムを鳴らした。
それから、しばらくして、ガチャリと開けられる、扉。

「レッドか。もう、平気なのか?」
「平気なんかなじゃい。それより、ピカチュウだよ。…こんなの、お前に頼むのあれだけど…時間があったら、見てくれない、かな」
「………わかった。中に入れ」

大丈夫なのかと問われれば、大丈夫なんかじゃない。
だって、こんなにも元気のないピカチュウ、見たことないのだから。

悲しそうに、伏せられた、ピカチュウの瞳。
あぁ、どうして、なんで。

案内された部屋のソファーに座りながら、やっぱりどこか様子のおかしいピカチュウに、彼の心音は、どんどん早まる。

「ねぇ、グリーン、ピカチュウ…どうしたんだと思う?昨日から様子がおかしくて…」
「レッド、お前に心当たりはないのか?」
「ないよ、あったら…先にあたってる。わからないからお前のところに来たんだろ。分かれよ、ばか」

こんなにも、こっちは焦っているのに、グリーンは、いつまでも、普段と同じで。
そんな様子に、彼は、少しずついらついてくる。
どうして。
なんで。


そんな瞳で、僕を見るの?





「なぁ、レッド、お前、ピカチュウのこと、いつからそう呼ぶようになった?」




ちかい。


気がついた時には、彼は、グリーンに、押し倒されていた。
見えるのは、天井。
視界に微かに入る黄色は、きっと、ピカチュウのしっぽ。



どくどくと、心音が、高鳴った。



3人目
僕だって、お前なんかお断りだ










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あきゅろす。
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