世界でいちばん、 「お前なんて、大嫌い、だ」 こぽり、と水の中にいるような、感覚。 こぽりこぽり、と耳の中に水が入る。 だからか、僕には音など、聞こえなくて。 目を伏せれば、身体が水中をただよっているように、錯覚、する。 「大嫌いだ、お前なんて、イレブンが、おれに寄るな、近付くな、視界に、入る、な!」 嘘。うそ。 そんなの、ただのうそ。 あっているのは、錯覚してる、という点のみ。 ゆらりゆらりと、身体を包む水なんて、何処にもない。 あるのは、僕という物であり、また、彼という物、もしくは、者、ということ。 だから、いたい。いたいいたい、痛い。 なんだろう、この突き刺す痛みは。 傷つくのは、慣れているはずなのに。 なのに、痛みはひかなくて、自分ではどうしようもなくて、だから、誰か、助けて。 「触る、な、と言っている!触るな触るな触るな、このイレブンが!」 あったかい。 あったくて、おちついて。 なのに、なんでか、まだ、痛みは、治らない。 どうして、なぜ。 甘い香りに、むせかえりそうになりながらも、ぎゅっと抱きしめれば、身体も、心ですらも、この痛みから、逃れられると思ったのに。 なのに、心の痛みはひかない。それどころか、頬には、ピリリとした、痛みまで。 手を伸ばせば、そこから、赤い、血が。 「ざまあみろ、そのままもっと、傷ついてしまえ!あぁ、でも、そうしたら、おれが汚れる、お前なんかの血で、おれが、お前の、血で!」 がりっと、頬にまた、傷がつけられる。 痛い、な。 視線を向ければ、彼は、僕の頬にできた傷を満足げに見つめ、でも、自分の爪に溜った僕の血を、心底、嫌そうに、見ていた。 「やめろ!なにをしたのか、分かってるのか?!お前はいいだろうな、そうやって、何も考えず!そうだ、そうやって、いつもおればかりが汚れる、お前なんかの、せい、で!」 細くて、頼りない手をとり、彼が嫌がる、僕の血を、舐めとるけれど、それも、逆効果、だった、らしい。 そう言えば、よくみんなにも、空気を読めといわれてたな。 「うるさい、黙れ、黙れと言っている!誰がそんなものを聞く?誰が発言を許した?イレブンのくせに!スザクの、くせに!」 痛い。痛い。 彼も、この痛みを感じているのだろうか。 彼も、この痛みに囚われてしまったのだろうか。 彼に、分かって欲しくて、でも何をしても空回り。 ぼろぼろに、なっていく。 身体も、心も、なにもかも。 あぁ、なんでこんなことに、なってしまったのだろう。 僕には、わからない、理解できない、したく、ない。 だって、進んでしまった時計は戻らなくて、あのとき、ああしていればなんて、そんなのただの無駄な時間。 「きたない、さわるな、おちて落ちて堕ちてしまえ!そうだ、おればかり堕ちるなんて、許さない、白、白白しろしろ!だったら黒くなるまで、おれの中に入るな!おれよりも、堕ちてしまえば、いいのに!」 何をやっても、だめ。 なら、本当に堕ちてしまおうか。 いっそ、その方が楽な気がする。 そうしたら、彼は、僕のところまで、堕ちて、くれるだろうか。 「そしてそのまま、深い闇でもがけばいい!独り、孤独で!」 君は、優しいから、きっと、共に堕ちてくれるでしょう。 それを、僕は、知っている。 でも、ルルーシュ、僕は、僕、は、 「好きなんだ、ルルーシュ、あいして、る、よ」 クツクツと、聞え始めた笑い声。 そっと、傷を撫でるように頬を、挟まれ、視線をあげれば、 「しんでしまえ」 お前も、世界も、おれ、も それでも僕は、君、を、 . [*前へ][次へ#] |