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あさ



待ってくれ。
ちょっと待ってくれ。


(僕は幼児誘拐犯になった覚えはない!)


小さくて黒くて、ふわふわした子猫二匹を拾って一晩。
目が醒めたら、部屋の隅っこに同じ毛布に包まってすやすやと寝息をたてている、こどもが二人いた。

ぐるぐると僕の要領の少ない頭がまわる。
よし、落ち着け、落ち着くんだ、僕!
昨日、帰ってきて、子猫たちにミルクをやった後、僕もすぐに寝てしまって…。ほら、やっぱり、僕の記憶には子猫は拾えど、子供を拾った覚えはない。
ならばなぜ、ここに子供が!

と、考えていたら、もぞりと毛布が動き、一匹が目を覚ました。
二人の子供は、同じ顔で、同じくらいの慎重に、同じ黒髪、同じねこみみねこしっぽ。
……ねこみみねこしっぽ……?

「……ん、ぅ……るるーしゅ、るるーしゅ…」

ぼんやりと目を覚ました一人は、すり、と、まだ寝ぼけているのか、もう一人に擦り寄る。
すると、もう一人も瞳を開き、これまたぼんやりとした顔で、互いを見つめ合い始めた。

「るるーしゅ、おはよう」
「…ぜろ……、おはよう、ぜろ…」

きゅう、と、小さな手を繋ぎ合って、互いの額や頬にキスをし始める。そのまま、キスを落とす場所が唇になり、ちゅく、と、小さな水音が響き始めた。
待って、待ってよ、待ってくれ。
なんで朝からこんな濃厚なキスをかましあってるんだ、この子供たちは。
たかが子供、されど子供。
なんだか、見てはいけないものを見てしまった気分だ。
…頑張れ、僕!

「あ、あの…」
「…んっ…ぜろ…」
「るるー、しゅ…ん、ぅ…」
「ちょっと!子供のくせに朝から何してるの!教育的指導!ストップ!!」

二人して、目がとろん、と、し始めたところでさすがにまずいと思い声をかけると、同じタイミングで、二人の視線を一身に浴びた。
…なぜだろう、なんだかすごく邪魔してしまった気がするのは。けど!教育的指導!!

僕に気がついた二人は、ぎゅっと互いを守り合うように抱きしめ合う。
けれど特に、片目だけ赤い子供は、両目が紫の子供を僕から庇うように、鋭い視線を向けてくる。

「…ぜろ、だれ、あれ」
「…きのう、おれたちをひろったやつ」
「……こわい……」
「だいじょうぶ、まもる」

そういうと、赤目の子供は、両目が紫の子供の、なぜか生えてるねこみみの付け根を、ちろりと舐めた。
あぁ、あまり、と、いうか、違うことを祈りつつ。

「あの、さ、君たちって…昨日の子猫?」
「…こいつ、ただのばか、るるーしゅ」
「…ただのばか、ぜろ」


なぜ、そんな哀れみの視線で僕は見られなければいけないんだ!





小さくて、黒くて、ふわふわした、二匹…二人?
うるさい。だまれ。ねむい。




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あきゅろす。
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