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ナイトオブゼロ2





ぷしゅ、と、音をたてて扉が開く。
そこは、華美な装飾の施されたラウンジ。
円卓の騎士たちが集まる、場。
ふわりとマントをなびかせ、ルルーシュは、一歩、足を踏み入れた。

普段、ルルーシュはこのラウンジへは入らない。
それは、誰かしらこのラウンジにいる可能性が高いからだ。
関わりたくない。
できるなら、誰にも、一人で、いたい。
なぜそう思うのかは、わからずとも、ルルーシュは、きっと、大勢と馴れ合うのが得意ではない性格なのだろうと、自分を分析していた。
だから、いつもは、何もすることがないときは、自室で睡眠を取るか、日の光が当たらない書庫の奥に行って本を読んでいるか、大抵はそのどちらかだった。
ただ、そうはいっても、人との関わりを完全に絶つことは、不可能だ。
だからこそ、今、ルルーシュは、この場へと足を踏み入れたのだから。

ラウンジに置かれた、きっと、座り心地のいい、ソファー。
自分は座ったことがないから、分からない。
そのソファーに、金色と、桃色を、見る。
手に持った書類。
それも抱えて、ルルーシュは、その二人の座るソファーの一歩後ろに立った。
そして、小さく口を開く。

「……ヴァインベルグ卿」

ぽつり、と、落とした言葉。
その言葉に、ヴァインベルグ卿と呼ばれた金髪の青年と、隣に座っていた桃色の髪の毛の少女が勢いよく振り向く。
その姿に、軽く目を見開きルルーシュは驚くも、すぐに、いつものように、目を細めた。

「うっわ、びっくりたー、ルルーシュか!お前、気配消して後ろに立つの寄せよなー」
「消してない。それに、ラウンズなのに気がつかない方がおかしい」

驚いたのはこっちだ、と、思いながら、ぽつぽつと、ルルーシュは平淡な声で話す。
それとは逆に、青年は、にこにことその顔を緩めていた。
隣にいる少女は、ルルーシュと同じく無表情だったけれども、すでに興味を失ったのか、再びソファーに行儀良く座り直して携帯電話を弄っている。

「しかし珍しいな、ルルーシュがここにくるなんて。何か用か?それとも俺たちと一緒に遊ぶ?」
「……これ」

手に持っていた書類を、ルルーシュは青年に渡す。
自分の元へとまわされた書類。
その中の数枚が、この青年に渡るべき書類だったのだ。
それを、渡しにきただけ。それだけだ。
だから、ルルーシュは、それを青年に手渡すと、そのまま踵を返して、扉へと向かおうとする。
が。
ぱしっと、手首を掴まれた。
なんだ。
ルルーシュは眉を寄せながら、ゆっくりと振り向く。
そこには、やっぱり、にこにこと顔をだらしなく緩めた青年がいた。

「なーなー、ちょっとここでお茶でも飲んでいけよ。どうせこの後も、部屋に戻るか、またあの暗い書庫に行くか、なんだろ?」
「悪いが、おれにはまだ仕事がある」
「いいじゃん、少しくらい!なー、アーニャもそう思うだろ?」
「……どっちでもいい」
「ほら、アーニャも嫌だとは言ってないから!な、ルルーシュ!」

きらきらと輝くような、笑顔。
なぜだか、そんな、笑顔に、だめだ、と、心の奥底で、ルルーシュは呟いた。
きっと、この二人の傍は、あたたかいだろう、楽しいのだろう。
けれども、自分には似合わない。関わりたくない。
きっと、また、裏切られるのだ。

ぱしん、と、乾いた音が響く。

その音に、青年は、きょとん、と、目を見開き、少女は、ちらりと一瞬だけ視線を向けた。
振り払われた青年の手、ではなく、振り払ったルルーシュの白い手が、赤くなる。
そして、ルルーシュは、今までよりも、その表情を険しくさせて、そのまま、去っていった。





(なんだなんだなんだ、なんだ!あいつは、あいつらは!!勝手に、触って、勝手に、入ろうとした!おれの、中、に!)




きゅっと、ルルーシュは、唇を噛み締める。
ゆっくりと、息を吐き出しす。
そして、いつもの、何色も映さない瞳に戻すと、再びマントをなびかせ、歩きだした。





そこに在るだけのソファー
あたたかい場所が、懐かしい、そんなことを思った自分に、心臓が音をたてた








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