孤独の幕開け ふわり、と闇色のマントが舞う。 彼は、その仮面を外し、ベッドに投げ、自分はため息を一つ溢してソファーに座った。 「・・・ルルーシュに会いたい」 「なら、呼べばいいだろう、ここに」 あいつなら、お前がいると聞けばすぐにくる、とC.Cは言う。 すると、彼は、再びため息をつき、馬鹿か、と言った。 馬鹿はお前だ、このブラコン、とC.Cは思う。 「ルルーシュをこんなところに呼べるか。 あのこは、日の下で笑ってる方がいい」 甘い。どろどろに溶けた砂糖より甘い、とC.Cは、眉をひそめる。 「それに、ルルーシュがここにきてみろ。 スザクと敵対した事で、どうなるかわかったものじゃない」 C.Cは、彼とそっくりな、半身を思い浮かべる。 彼が、大切に、大切に、守っている半身。ルルーシュ。 ルルーシュとは、何度かあった事が会った。 彼の知り合いだ、と紹介された時の、見開いた瞳。 お茶をだす、と言って彼が席をたった間の、探るような視線。 その後、彼を手伝うと言って、ルルーシュも席をたったが、恐らく、私は信用できないとでも言いにいったのだろう。 猫の様なところはそっくりだが、ルルーシュの方が表情がでやすく、わかりやすいやつだ、と言うのがC.Cの印象だった。 「だったら、枢木スザクにギアスでもかけて、こっちに入れればいいだろう」 「それはダメだ。 そんな事したら、スザクがかわいそうだろ?」 嘘をつけ、嘘を。 目が、笑ってるぞ。 「・・・そういえば、お前は、アイツが嫌いだったな。 そこだけか、ルルーシュと違うのは」 「まさか。俺だってスザクは好きだよ? 大切な、友達、だ」 ルルーシュが、辛いとき、側にいたのは、スザク。 ルルーシュに、再び、笑顔を、与えたのは、スザク。 なのに、なんで、俺がスザクを嫌う? 「ルルーシュが、好きなものは、俺も好きだよ」 「・・・それはそれは。 その弟様の、好意が、その男に向かっている、と知って、まだそんな事を言えるなんて、心が広いな」 すると、彼は目を、少しだけ、見開く。 表情が、どんなものに変わるか、わくわくした。 傷つくのか? それとも、気に入らない現実を、言われ、怒りを表す? 「そうだな、確かに、ルルーシュの好意が、俺やナナリー以外に向けられるなんて、驚いたけれども、二人の事を考えれば、惹かれあうのは、必然だろ?」 「なんだ、意外とつまらない事を言うな」 「つまらなくなんてない。 理想の兄、じゃないか」 ふふ、と彼は笑う。 その姿が、ほんの少し、彼の片割れと被ったが、それもすぐに否定し、やっぱり全然似てない、とC.Cは思った。 「お前、私を騙せるとでも思ってるのか? 私を誰だと思ってる」 「C.C様、だろ」 「そうだ。なのに、そんなものに騙されるか」 枢木スザク、その名が、出るたびに、彼の瞳には、闇が宿る。 本当は、彼が、守るはずだった。 本当は、彼が、再び笑顔を与えるはずだった。 それでも、彼が何度も、スザクを求めるのは、ただ、半身の為だけであって、彼の意思では、ない。 「かわいそうに、かわいそうな、ゼロ。 お前に残った、愛は、奪われ、お前が与える、愛は、流される」 「同情か?ならば、同情される方が、俺は、哀れだし、C.C、お前は、間違えてるよ」 くすり、と彼は笑みを溢した。 その笑みだけは、悪戯に輝き、あぁ、彼もまだ、半身と同じ、子どもなのだと、思い知らされる。 くすくす、と笑いが彼から、溢れる。 珍しい。 こんなに、感情を表すなんて、本当に。 「ルルーシュの好意は、好きなだけ、あげるさ。 でも、いくらスザクが、あいつが、ルルーシュを愛しても、所詮、ルルーシュがあいつに与えるのは、好意だけ」 「・・・全ての愛情は、お前に、か」 「スザクも、かわいそうにな。 あぁ、かわいそうだ、同情する、慰めてやりたい、だって、どんなに愛しても、ルルーシュから返ってくるのは、好意だけ。ルルーシュも、気が付いてない。だって、俺が教えたのだから、愛だけは、俺にちょうだいって。だから、俺だけでも、スザクに、優しくしてあげないと。俺とスザクは、友達、なんだから!」 楽しくて、楽しくて、しょうがない! そんな、笑い声。 C.C、お前にだけ、教えてやるのだから、と、小さな子どもが、嬉しそうに、言ってくる。 あぁ、この子どもは、もう、 「孤独、なんだな」 本当は、心の中にしまったはずのその言葉は、口にでていて、彼は、きょとん、と、やはり普段は見せない表情をし、そして、また、普段なら、半身にしか見せない笑顔で、言った。 可哀想な、哀れなのは、それに気が付かない、犬だよ 孤独のブランケットに包まれ子どもは笑った . [*前へ][次へ#] |