君の笑顔を守ります 「ルルーシュ、ルルーシュ、ルル、」 ゼロは偶に、本当に偶に、弱くなる。 それはなにか切欠があるとか、そういうのではなく、急に、なるんだ。 大抵の場合は、おれが部屋にいるとき、ゼロの部屋にいるとき、二人っきりに、なったとき。 だからといって、泣くというようなことはなく、ただただ、おれを、抱きしめる。 ここにいるのに。 おれは、ここにいるのに。 ねぇ、ゼロ、 「おれは、ここにいるよ」 「るるーしゅ、」 「ぜろ、おれは、」 ここに。 ゼロは、いつでも守ってくれた。 ゼロは、いつでも守ってくれる。 そしてこれからも。 世界は、やさしくないから。うつくしくないから。 それから守るように、いつも。 「いやだ、いやだよるるーしゅ、いやだ」 「ぜろ、どこにも行かない。もう行かないから」 「いやだいやだいやだ」 ゼロの世界は、狭い。 いるのは、おれと、ナナリーと母様だけ。 それだけでいいのだと、ゼロは笑う。ゼロの慈しむ愛すべき世界。 あの日、別れを宣告されたあの日、ゼロの世界は壊れたというけれど。 ゼロは、世界から消されたというけれど。 今もなお、その世界は消えずに、ゼロの中にある。 そのやさしい世界に、目を閉じ、蓋をして、そして外に投げ出された、おれの、片割れ。 やさしくあたたかい世界から、一人、いや片割れを残して、半分しかない身体で、この醜い汚れた世界に投げ出されたのは、どんなに辛かっただろう。 おれには、ナナリーがいたから。 おれも、ゼロがいなくて、半分しかなかったけれど、個々とはいえ、守るべきナナリーがいたから。 「ずっと一緒だよ、ぜろ」 「ずっと、いっしょ、」 「だっておれたちは、ふたりで、」 「ひとつ、なんだから」 そう、おれたちは、二人で一つ。 二人いて、初めて存在が確定されるべき、未完成品。 再び同じ魂に戻ることのできない、未完成品。 元が同じ魂も、この醜い世界に産まれたときに、分けられてしまったけれど、だからこそ、離されてしまうのは、辛い。痛い。 それがずっと、ずっと、おれたちを、おれを守ってくれる兄を、片割れを、半身を、ゼロを、傷をつけた。 「守るよ、守る、今度は、守る、から、だから、るるーしゅ、」 「ぜろ、うん、守って、今度は、守って、そして、」 私も、あなたの笑顔を、守りましょう。 それで貴方の笑顔が見れるのならば。 . [*前へ][次へ#] |