[携帯モード] [URL送信]
リトルドッグ!すきっぷ!


「卒業発表会?」
「そう!」


ぱたぱたと揺れる尻尾が、見えた、気がした。

お隣の、ちょっと生意気な小学生、枢木スザク、六年生。
彼は、小学生らしい、可愛らしい笑みを浮かべてこくん、と頷いた(いつもこうだと可愛いのに!)
そんな可愛い、自分の弟のように、可愛がってきたスザクが、子犬どころか、狼だった、とかなり笑えない事件があったのは、この際、すっぱりきっぱり水に流して、そのまま浄水機にでもかけてしまいたい事実だったりする。
と、いうより、童貞より処女を、年下の、しかも小学生に奪われれるって・・・!!
ちなみにその日は、枢木家の夕飯は、お赤飯だったらしい(我が家はお裾分けを貰った)

「卒業発表って、何、するんだ?」
「おれのクラスは合奏」

スザクが、合奏・・・。
この、どこまでも我が道を爆走する、スザクが、他の人に合わせて、合奏・・・!!
それは、いろんな意味で見物な気がする。

「で、それ、何時なんだ?」
「今週の土曜日」
「確か、その日は生徒会があった気が・・・」
「くるよな?」
「だ、だから生徒会、」
「くる、よな?」

ぱふ、と、おれのベッドから降りて、ずいっと、前に出てくる。
一見、小学生が上目使いをしているような、愛らしい格好だけれども、ぎゅっと手を掴まれ、しかもどことなく、瞳は不機嫌な色に染まりかけ、要するにおれは、

「・・・何時に行けばいいんだ」
「十時半から開始!」

捕獲された、と言うことだった。

「まったく、なんで私まで行かなければならない」
「いいだろう、別に。
いつもお前の世話をしてるのは誰だと思ってる」
「そんなの頼んだ覚えはない。
それと、礼はピザ二枚でいいからな、感謝しろ」
「・・・わかったよ」

土曜日、当日。
その後、ナナリーに、発表会に行くと言えば、「お兄様お一人では、たぶん、浮いてしまわれるのではないでしょうか」と言うアドバイスを貰ったので、本当に不本意だが、C.Cを呼んで行くことにした。
ちなみに、他の友だちは生徒会だし、仕事があるので誘えなく、かと言って他に親しい人もいないから、しょうがなく、C.Cを誘ったのであって、まったくこれっぽっちも、他意は、ない。

「で、何処にいるんだ、お前を好きとかいうおもしろおかしいお子様は」
「・・・お前、少し黙れ」

確かに、おれも、おもしろおかしいとは思うが、それを他人に言われるのは、なぜか、気に入らなかった。

「ルル!!」

わらわらといる、小学生の中から、茶色いふわふわが飛び出してくる。
まぁ、間違えるはずもないが、スザクだった。

「来てくれたんだ!」
「約束、しただろ?」

言えば、本当にうれしそうに、笑う。
が、すぐにその視線は、おれの横、C.Cへと打った。
「・・・誰?」
「え、あぁ、彼女はおれのとも「将来を誓い合った仲だ。C.Cと呼んでくれてかまわない」

・・・おい。
だから、誰が、いつ、どこで!!お前と将来を誓ったんだ!!
ぎっ、と睨むと、C.Cは、それはそれは楽しそうに、にやにやと笑っていた。
そして、ちらりと視線を、スザクに向ける。

だから。
だから!!
スザクには、俺ルールというのがあって、そして、めでたく、ルルは俺の、というルールも加えられているのであって、それからわかるように、かなりの独占欲の持ち主であるスザクの前で、そんなことを言われたら、どうなるか分かったものじゃない!!

「・・・へぇ。ふぅん。そう。」
「い、いや、じょ、冗談だから、な」
「私は、冗談は嫌いだ」
「お前はもう黙ってろ!!」

なんてことだ!
やっぱり一人でくればよかった!
恐る恐るスザクを見てみれば、初対面だし、周りには親たちもいるからか、その表情は、笑っていた。
・・・でも、握り締められた手は、ぷるぷると震えているし、その、さりげなく握られた手も、かなり力が入っていて、痛い。

「・・・ルル、おれ、がんばるから、見てろよ!」
「あ、あぁ、まかせておけ」

いたい。
でも、今それを言ったら、たぶん、終わる。
何が終わるかなんてわからないけれども、きっと、なにかが終わる!!
それくらい、スザクの機嫌は急降下していた。
おれは、悪くないのに!!

「じゃあね」

そう言って、彼は、仲間の下へ戻った。
ちなみに、戻るときに、わらわらと群がっていた小学生たちが、あまりのスザクの機嫌の悪さに、海が割れるように道をあけたのは、見なかったことにする。

「実にいい子どもだな。ルルーシュ、お前くらいいじりがいがある」
「・・・おぼえておけよ、C.C!!!」

そして、卒業発表会は、難なく終わり(途中、スザクの視線がとても、痛かったが)、最後に、今日来てくれた人へ感謝の手紙を渡そう、ということになった。
事前に招待する人を決めておき、そしてその人に手紙を渡す、ということらしい。
そこで、やはり、スザクはおれ宛、ということだった。
ずん、とやはりこういうことは恥ずかしいのか、無言で手渡され、たたっともとの場所に戻っていく。
スザクからの、感謝の手紙・・・!!
なんだかんだ言って、弟のように可愛がってきた存在なんだ。
柄にもなく、ちょっと感動した。

「・・・お前、涙目になってるぞ」
「うるさい」

あぁ、スザクも、春から中学生なのか・・・。
あんなに、ひよこみたいにおれの後ろをちょこちょこついてきて、子犬のようにじゃれついてきたスザク。
そして、手紙を開くと、そう、たぶん、たぶん、さっきまではおれへの感謝の言葉が書いてあったんだ。
が、しかし。
すごい勢いで消された後の上に、黒のそれはもう太いペンで、書かれていたのは、



「家に帰ったらおぼえとけ!!」




・・・やっぱりピザは一枚でもいいぞ
しいぃぃぃつうぅぅぅぅ!!!(お前のせいで!!)





.

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!