0と7の相性 ルルーシュは、うろうろと、ラウンジに続く扉の前を歩く。 タッチパネルに触れようとしてはやっぱりやめようと離れ、しかしけれども、それではだめだと再び手を動かし、また止めて。 かれこそ、そんなことをし始めて三十分。 ルルーシュは、悩んでいた。 助けてもらえるなら、アーニャでもジノでもいいから助けてほしい。 そんな風に考え、うううう、と、らしくもなくうなり声をあげたとき、パシュ、と、扉が開いた。 「いい加減、うっとおしいから」 ルルーシュは、身を縮めて、居心地悪そうに身じろぎをする。 すると、大人しくして、と、耳元に、彼の声が響き、そのまま、ぎゅう、と、腰に片腕を回された。 とん、と、肩に重みを感じ、視線だけ後ろに向けると、いささか機嫌の好さそうなスザクの姿があった。 先日、アーニャと恐怖の戦場体験をし、ジノと思う存分に可変式を楽しんだルルーシュの元に、再び、同じ内容の命が下りた。 アーニャとは、あまりの恐怖でトラウマになり、一緒に出撃することができなくなり、ジノとは、前回の教訓により周りから一緒に搭乗することを止められたルルーシュ。 そして、その二人の他に、一緒に出撃できる程、心を許した人物となると、ルルーシュの中には、先日のピクニックからほんの少し距離を縮めることができたスザクしかいなかったのだ。 しかし、そんな彼に、なぜか、狭いコックピットに二人で乗るということを、なかなか誘うことができず、そして、ついに、彼の方から、声をかけられたのだ。 どうにも、ルルーシュの態度は、スザク本人にしても、見え見えだったらしい。 だが。 なぜか、ルルーシュは、戦場に向かうランスロットのコックピットの中で、スザクの膝の上に、いた。 今まで、アーニャも、ジノも、操縦席の後ろに身をかがめてたっていたのに、なぜか、スザクは搭乗したと同時に、あぶないからと言いながら、当然のようにルルーシュを自分の膝の上に乗せたのだ。 「…枢木卿」 「なに?」 「……この体制になにか意味はあるのだろうか?」 「後ろに立ってると危ないよ。君なら舌を噛むに決まってる」 「決定事項なのか!?」 「うん」 たしかに、このランスロットは、今までのモルドレッドやトリスタンよりも、激しく動くだろう。 ランスロットは、そもそも、前線で動けるようにと作られた機体であり、戦場におけるブリタニア軍の主要戦力なのだから。 だが、だからといって、なぜ、膝の上に。 ルルーシュは、意味がわからないと、ぐるぐると考える。 けれども、断られてはしまったものの、自分が惹かれる相手のぬくもりが、直に感じられる、と、いうのは、中々にルルーシュを刺激した。 そんな彼を、スザクも分かっているのだろう、くすくすと耳元で笑いながら、ルルーシュを抱きしめるように手を伸ばし、そのまま操縦を続ける。 だが、戦場につくと、その雰囲気も、すぐに消えさる。 「…振り落とされないように、掴まってて」 「あぁ、わか…ほあああぁぁぁあああああ!!!」 ぽつりと耳元で囁かれ、スザクの纏うオーラが、鋭いものになる。 それにルルーシュは反応し、身体に力を込めて衝撃に備える。 と。 一瞬、身体がふわりと宙に放り出されたように軽くなり、そして、そのまま、一気にランスロットは、急降下した。 激しい衝撃がコックピットを襲い、しかし、その瞬間にはもう急上昇をしている。 がくがくと揺さぶられ、ルルーシュが、がくんと前のめりになると、後ろから舌打ちをした音が聞こえ、そのまま、スザクの胸元に、引き寄せられ、しかも、押さえつけられた。 ふが、と、情けない声が、ルルーシュの声からもれる。 「ちょ、くるる、ぎ、きょう…!これでは、なに、も、みえな…!」 「いいから!お前は黙ってろ!」 ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、しかし、ということは、スザクは、片手で操縦しているということになる。 いいのだろうか、いいやいいはずがない。 ルルーシュは、もがもがと反抗するも、きっと、強い瞳に睨まれると、ぴたりと固まってしまう。 なのでしょうがなく、ルルーシュは、反抗することを止めた。 の、だが。 (…なぜだ、なんでこのランスロットが活躍するたびに苛つくんだ) なぜか。 ルルーシュの中で、苛々が少しずつたまっていく。 ルルーシュ個人としては、このランスロットに嫌な思い出はない。 だが、記憶が消える前のルルーシュには、はたして、同じことが言えるのか。 深い深層心理からくる苛立ち。 そして。 「あ」 「は?…え、ええぇぇええ!!?ききき君、なにやってるの!?」 「いや、いらっとしたから…つい」 「つきで君は自爆装置を押すのか!?」 そう、つい、出来心で。 なぜか、心の中で、この白兜が!!!!と、無意識の言葉が浮かび、つい、壊れてしまえ!!と、お前のせいでおれの計画台無しだ!と、っていうか技術部だって言ったじゃないか!と、思ってしまい、その腹いせに、わざとらしいほど目立つ赤いスイッチを押してしまったのだ。 ビー!、と、警告音が鳴り響く。 あと三十秒と、画面に、黒と赤の文字で記される。 「すまない、悪気は…あったかもしれない」 「あったのか!?君ってやつは…君ってやつはこんなときまでえええぇぇぇえええ!!!」 なぜだろう、こんなときにも関わらず、なぜか、スザクは、スイッチを押したルルーシュ、の、その向こうを見ている気がする。 自分を見ないスザク。 こんなときだからこそ、ルルーシュは、今度は、自分の意志でもって、つん、と、顔をそむけ、適当に手の届く場所にあるスイッチを押した。 すると、右肩に装備されたハドロンブラスターが、がこん、と、音をたてて外れる。 「何やってるのー!?」 「……枢木卿が悪い」 「意味がわからない!」 赤い警告ランプがつく。 画面には、あと十秒の文字。 「あぁ、もう、だから……おれは生きなくちゃいけないんだよおおおおおおぉぉぉぉおおおお!!」 なぜか、ルルーシュの目には、朱雀の翠の瞳が、赤くなったように、見えた。 その後、がむしゃらに操縦したスザクのおかげでなんとか自爆することは防ぐことができ、そして、ルルーシュを戦場につれて指揮させるという試みは、なかったこととして闇に葬られた。 0と7の相性 もう絶対!二度と!君とランスロットには乗らない!!! [*前へ][次へ#] |