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ベィビィ・ベィビィ・ユア・フェイス


おれは、世界一の幸せ者ではないかと、思う。
だって、世界で一番愛らしい妹と、世界で一番可愛い恋人がいるのだから。
そう、おれの恋人、枢木スザクは、世界で一番可愛いのだ。



スザクは、可愛い。
大きくてまん丸で、きらきらと緑に輝く瞳。
風が吹くとふんわりと揺れる、くるくるした、チョコレート色の髪。
きわめつけは、あの、とろけるような笑顔。
おれと同じ年のはずなのに、どこか幼く見えるのは、日本人だからとかじゃない。
スザクだから、なのだ。
そんな笑顔を、おれよりもほんの少し小さな背のために、上目使いで、しかもちょこんと首を傾げられてみたらどうだろう。
おれじゃなくてもイチコロ、だ。

ようするに、スザクは、可愛くて可愛くてしょうがないのだ。
それはもう、おれが溺愛する妹、ナナリーと同じくらいに。

例えば、朝。
いつものようにナナリーを中等部に送る。
そして、それから教室に向かう。
するとどうだ。
教室の中に入ると、友人たちからかけられる挨拶を耳に、ぱっと、振り向く影。
そして、タタッと走ってきて、子犬のような笑顔を浮かべ、おれの周りをちょろちょろとくっついて歩くスザク。
子犬、もしくはひよこだ。
それから、友人にも優しげな笑みを向けるものの、やはり、おれにだけというような、甘くてとろけるような笑みを見せて、言うのだ。

「おはよう、ルルーシュ」

なんだこれは。
その可愛さは武器なのか?対おれ用の某フレイヤなのか?
と、普通の男なら思うだろうが、おれはスザクの幼馴染故にこの、いっそ攻撃ともいえる笑顔ですら、かるく受け止めることができる。
そして、そのとき、周りのスザクを狙う視線に、負けじとばかりに睨みかえすのだ。
なにせ、スザクは、その可愛さを助長するかのごとくに、ほんわかと甘く、そして天然なのだ。
ナナリーもスザクも、おれが守る!

そして、例えば、昼。
今日もくだらない教師の授業を聞いて、そろそろ空腹を感じ始めたころに鳴る、昼休みのチャイム。
そのチャイムが鳴ると、スザクは、朝のように再び、ぱたぱたと音をたてておれの元をやってくる。
その手にはいつも、さまざまな菓子パンが抱えられている。
焼きそばパンを始め、メロンパン、アップルパイ、チョココロネ。
どれも甘くて、まるでスザクの内面を表すようだ。
にこにこと笑みを浮かべ、お腹すいちゃったね、なんて言う姿を瞳に写しながら、おれも席を立つ。
本当ならばこのまま教室で食べてもいいのだが、なにせこの場にはスザクを狙う狼共があふれかえっている。
そんなやつらに、頬にチョコレートをつけたスザクなんて見せてみろ。
食べてくださいと言っているようなものだ。
だから、おれはスザクを連れて屋上へ向かう。
そこなら、誰にも邪魔をされないからだ。

そして、ごくまれに、スザクは、そのぷにぷにとした頬を赤く染めて、ちょん、と、おれの手に弁当箱を置く。

「あの、さ、ルルーシュには敵わないけど、食べてくれないかな…?」

うるうると水の膜を瞳に溜めて、そして渡されるそれ。
ぱかりと開けると、色とりどりで、でも、ところどころ焦げたおかず。
少し焦げた卵焼きを口の中に入れると、甘くて、でもなぜか少ししょっぱい。
それでも、はらはらとしながらおれのコメントを待つスザクを見てしまうと、おれのために作ったのだと思ってしまうと、そんなもの気にならなくなる。
おれが作る料理なんかよりも、ずっとずっとおいしく感じる。
だから、それをそのまま伝えてやると、緊張していた顔がゆるみ、そして、今度ははちみつにひたしたような笑みを浮かべてくるのだ。




ようするに、だから、スザクは、とても、かわいい。

まんまるの瞳。
くるくると髪。
甘い声。
幼い笑顔。

全て、全部が、可愛い。
だから、ナナリーと一緒に、スザクは、おれが守らないといけないと思っていたんだ。
そして、こんなにも可愛いなら誰だって思うはずだ。

おれが、上だ、と。

それがどうした。
なんだこれは。

おれの視線の先には、スザク。
そして、天井。

「ルルーシュ…ごめんね、僕、もう…我慢できない」

悩ましげに顰められる眉も、色っぽいというよりも、おれにとっては可愛いとしか思えない。
それなのに、互いの唇が触れたと思ったら、おれの首筋にスザクは埋まり、首筋や耳裏を舐めて、そして、ちゅっとかわいらしい音を鳴らして、痕をつけ始める。

いやいやいやいやいや。
ちょっと待て。
ちょっと待ってくれ。
なにかおかしくないか。
いや、おかしいだろう!
だって、スザク、そこは、お前がいまいるそこは、



「お、おれのポジション…!」
「ルルーシュ、黙って。君は感じていればいいから」




その後に、すやすやと幼い顔をして眠る幼馴染兼恋人を見て、やっぱり可愛いからこれはこれでいいかもしれない、なんて、一瞬流されかけたおれは、眠れるはずもなく、次の日、酷い隈をスザクに心配されたのは、言うまでもない。






ベイビィ・ベィビィ・ユア・フェイス
本当に可愛いのはどっち?






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