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しん、と、世界は静まる。
聞こえるのは、とくん、と、響く、命の音、だけ。









「お兄様、朝ですよ!」
「ほら、兄さん、いい加減起きてよ」



ばたん、と、扉が開かれる。
それに振り向けば、可愛い妹と弟が、きょとん、として、立っていた。
きっと、いつもは寝起きが悪い自分なのに、こうして用意ができていることに驚いたのだろう。
けれども、二人は、すぐに笑って、自分の腕に抱きついてくる。
そして、三人で、おはようと、言う。

まだまだ甘えたがる妹と弟を腕に、そのままダイニングに行く。

「おはようございます、ルルーシュ様」

テーブルの上には、すでに朝食が用意されていた。
黒髪のメイド、咲世子が、にっこりと笑い、挨拶をしながら、三つのカップに紅茶を淹れる。
そして、三人で朝食を食べる。
ちょうど食べ終わったところで、クラブハウスのチャイムが鳴った。

その音を合図に、また、三人で玄関に向かうと、茶色のくるくるとした髪を持つ、翡翠の瞳の、幼馴染。

「おはよ、ルルーシュ」

今日も、相変わらず、ほわほわとした笑顔を向けてくる。
そんな姿に、ナナリーの頬が、なんとなく、染まる。
そして、その様子を見て、ロロが、少し不機嫌になる。
自分は、そんな二人につい笑ってしまい、そして、スザクは、相変わらず仲がいいね、と、笑って。
それから四人で学校に向かうと、後ろから、澄んだ声が響いてきた。

「ルルーシュ!スザクにナナリー、ロロも、おはようございます!」

たたた、と、長い桃色の髪を揺らしながら、義妹のユーフェミアが走ってくる。
そして、そのまま自分の腕にくっつくあたり、半分とはいえ、ナナリーとロロと、やはり血が繋がってるんだな、と、思った。

途中、学年が違うナナリーそしてロロと別れ、今度は、スザク、ユーフェミアとの三人で教室に向かう。

「おっはよー、ルルーシュ!スザク、ユフィ!」
「ルル!それに二人とも、おはよ!もー、聞いてよ、またリヴァルが変なこと言うんだよっ」
「たぶん、変なのはシャーリーも同じだと思う…。…おはよ、みんな……ユーフェミア、さま」

教室に入ったとたん、リヴァルとシャーリーが目の前に迫って、何やら言い始める。
あぁ、また始まった。
そう思って、スザクに助けを求めるも、やつは相変わらず笑顔を浮かべたまま、さっさと自分の席に行ってしまった。こいつ!
ユフィは、ニーナにつかまってにこにこと話をしているし。
別にこのままでもいいのだが、いつ、リヴァルが口を滑らせて、賭けチェスのことを言い出すかわかったものじゃない。

と、そこで、がらりと、扉が開いた。

「ほら、もうチャイムがなったぞ。お前たちも席に着け!」

担任のヴィレッタ先生が入ってきたらしい。
助かったと思いながら、席に着くと、今度は、ピンポーンと、陽気な放送チャイムが鳴った。

「はいはーい!みなさん、今日も元気にお過ごしかしら?みんなの生徒会長、ミレイ・アッシュフォードよ!と、いうわけで…いきなりですが、モラトリウムを楽しめ!みんなでおにごっこ大会、はっじめー!」

生徒会メンバーを捕まえたら、ご褒美プレゼント!
そんなとんでもない発言をして、放送は、流れた。
教室からの視線が、びしばしと、身体に刺さる。
リヴァルやシャーリー、ニーナは固まり、最近入ったばかりのユフィはきょとんとして、そして、スザクは、自分と目を合わせて。

おれは、教室を飛び出した。

「これだからブリタニアは!!!」

飛び出した瞬間に、聞こえてきた声。
おそらく、まだ教室には来ていなかったカレンの声だろう。
きっと、廊下であの放送を聞いたに違いない。
ユフィはスザクにまかせてきた。
きっと、スザクなら、ユフィを守れる。
そう考えながら、大量の足音を耳にし、身を隠さねばと実験室へ潜り込む。

が。

「ざぁーんねぇーんでぇーしたああぁあ!」
「ごめんなさいね、ルルーシュくん」

ひょろり、とした、何かが出てくる。
迂闊にも実験室に入った自分に舌打ちをした。
そうだ、ここは、ロイド先生と助手のセシル先生のテリトリーだ。
とにかく逃げなければと、台の上に置いてあったビーカーを倒す。
すると、やはり、混ざった液体からもくもくと煙が出て。

その騒ぎに乗って、実験室を後にすると、曲がり角で、どん、と、何かにぶつかった。

「うっわ、ごめ…って、ルルーシュ先輩!」
「ルルーシュくん」

頭の上と下から、呼ばれる名前。
後輩のジノと、アーニャだ。
二人とも、こんな状態なのに、きゃっきゃと絡んでくる。
ジノには抱きしめられ、アーニャには写真を撮られ。
しかし、そんな時間などなくて。
この二人も、生徒会メンバーなのに、なぜこんなに余裕でいられる!
とにかく、逃げなければと、二人に、安全な場所を教え、そして、自分も、走った。

走って、走って、ついた場所は、ぽつんと、学園の端に建てられた、教会。

「あははっ!ルルってばへろへろ!」
「まったく、相変わらず体力のないやつだな」

ばたん、と、扉を開けて飛び込むと、そこには、無邪気に手を叩く子どもと、黄緑の髪を持つ少女。
うるさい、と、文句を言いながら、並べられた椅子に座る。
この場所なら安全だろうと、考えたからだ。
それからしばらく、この二人と過ごした。

そして、日も落ちて、空が紫になったころ、イベント終了の放送とともに、校庭に集まれと、会長の声が響く。

マオとC.C.、二人を連れて校庭に行くと、会長も含め、スザクも、みんなも、集まっていた。
スザクのもとへ向かえば、ナナリーとロロが飛びついてくる。
二人とも、ちゃんと逃げられたようで、逆に、自分の心配をされてしまった。
妹と弟に、身を案じられる自分を、スザクが、悪戯に指摘し、ユフィまでもがくすくすと笑う。
いくらなんでもそんなに言わなくてもいいじゃないかと、文句を言おうとしたところで。





夜空に、花火が打ち上げられた。












あぁ、せかいは、きょうも、うつくしい。










とくん、と、命の音が、聞こえる。
それだけが、聞こえる。


世界が静かなのか、それとも、ルルーシュの耳には音が聞こえないのか、それは、彼には分らなかった。


けれども、ひっく、と、小さな、泣くのをこらえるような声が聞こえて、世界が、静かなのだと、ルルーシュは、思う。


動かない手を、けれども、動かし、最後の言葉を、親友に、騎士に、大切な者に、告げる。
それは、ひどいひどい、恨みの言葉だけれども、けれど、それは、



(こんな、愛の言葉なんて、言う、の、ナナリー以外には、お前だけ、特別、だから、な)



きっと、世界は優しくなれる。
これは、確定された未来なのだ。
世界は優しく、そして、明日が、ある。

自分は、今まで、あまりにも、多くの犠牲を出しすぎた。
自分は、今まで、嘘にまみれて生きてきた。
だから、こうして、ピエロのように、自ら作り出したゼロという記号に、消されるのも、きっと、定めなのだ。
自分で、考えたのだから。
優しい魔女は、それではあまりにも、自分が報われないと言ってくれた。
けれども。




(愛しい人の、腕の、なかで、いける、の、なら、こんな、しあわ、せ、な、)





明日はある。






あぁ、せかいは、きょうも、












Re

(世界よ、どうか彼らに、しゅくふく、を、)













おつかれさま、ありがとう、おやすみ、だいすきだよ、るるーしゅ。

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