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〜闇夜物語〜
柄杓島のふなゆうれい;2
海が時化(しけ)るから
父は帰りが遅くなると
あぶないかもと


急いで帰りの準備をして
いたときらしいが


そのときに…
船の下からボャーッと


青白い薄明かりが
海底から上がってくる


まわりは濃霧でほとんど
視界はないのですが


船のまわりに打ちつける
波の音…


耳を澄ませば…遠くで
波と波が揺れ動くかすかな
さざ波の音が


そして!やや薄暗い海の
真ん中そこだけが…


それが海面に広がりて
やがて…
ちっぽけな海のなかの
砂の粒みたいな船です


当時、父親は

濃霧の中から
青白い海面のざわめきの
中から一瞬だけ

白い透明な無数の手に・
なったのを感じたらしい


いや…垣間見たのでしょう

むろん父は

「その昔、源平の古戦場
であった、そして時折
武士の亡霊がでる…」


「水島灘の柄杓島の
船幽霊のことが、ふと
頭のなかに過った…」

かはわかりませんが…


それが、船縁から
あがって来る気配が


白い霧の中に手のカタチ
の長いものが伸びてくる


父は恐くなり
目をつむり震えながら


一心不乱にお経を唱えた
そうなんです。


時間にして?
どれくらいの時が
流れたかはわかりません


やがて……
手は消えていました

薄暗い舟の中を見渡すと

薄暗いなかにカンテラの
灯りに照らされて

無数の濡れた
手形らしきのが一面に…


やがて霧はなくなり
星空が見えてました。


船幽霊は
伝えでは底の抜けた
柄杓(ひしゃく)を投げ

入れれば助かると言う
話をよく聞かされました



柄杓は舟には
無かったそうです……


昔は海での遭難を多くて
まして死体も
見つかりにくいですから


手は何をしたかったのか?

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