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魚と深海魚‖秋って寂しい



水が多すぎて

水に溺れる

呼吸を忘れた魚は

彼岸花の毒に沈む



深い深い水底に

横たえる

永く眼を閉じて

久しく眼を開けたら僅か

細く伸びた光が降り注ぐ

深海魚は

太陽に焦がれた





深海魚






唄うは

血の味彼岸花

痙攣と空腹と満腹と



眠らない座頭に

悲し気な花の色を語って聞かせて



夏の葬列がより一層赤を引き立たせて


時雨に濡れる姿も又一興


秋晴れはからりと晴れて

心残りをじわりと引き立たせて

青と赤と

くすんだ木の実の色と



記憶鮮やかなパパは何処にも居ない



其れでも構わず

豊穣を謳う



夏に失った物を補おうとするから

秋に一層深まる虚無感




難なく陸へ上がった魚は知った


こころは削られ補える物だと


魚の削られたこころは

深海魚が埋めるよと

笑ってみせた



カタカタとうぶられた風車は

何処にも届かない風を運ぶ


海には孵れない命は

陸の赤に泳ぐ






泳いで、游いだ


深海魚は夢に満ちて陸へ上がり

膨張と渇きに伏す



太陽が殺した様なモノだと魚は呪ったが



深海魚は

消えて行く全てに



嗚呼



何かを悟った







秋に失ったこころを

冬には補えない


魚は赤い彼岸花の中を絶え間無く


そうして


空の青さと

毒の赤さと


濃く透き通る青に





魚は

深海魚が埋めたこころを

彼岸花で埋め



深海魚が焦がれた太陽に

最後の言葉を吐く




嗚呼其れでも


愛しくて堪らないと


魚は


最初で最後の




涙を流した





end


あきゅろす。
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