夏の終わり‖老衰に似た終わりを
随分涼しくなって、
眼が醒めたら、
身体から草が生えていた。
もさもさもさもさ
(なんじゃこりゃ)
外は秋日和、頭がぼんやりとした。
溜め息と共に、ガリガリと頭を掻くと、草が落ちてきた。
頭からも
もさもさ
(生えているのか)
然し手で払うと、案外すんなり離れた。
益々不可解だ。
だが、暫くしたら再び草が生えてきた。
(なんなんだ)
払っても払っても
直ぐに草は生えてきた。
(花だったら未だ格好が付くんだけどなぁ)
仕方がないので、出掛ける予定をキャンセルして、
1日様子を見る事にした。
(ゆっくり休む良い機会だ)
ぼんやり草を眺める。
───邪魔には成らないが目障りだ。
5秒で出た結論。
でも矢ッ張り見付かると面倒なので、
「グリーン・グリーン」を唄いながら
部屋に隠った。
秋の斜めに成った太陽が
燦々と注ぎこみ、酷く明るかった。
光合成が進むんじゃないかと思ったが、
まぁ良いやとベッドに寝転んだ。
手近に有る本を掴んでぼんやりと眺めるが、結局飽きて放った。
緑が身体を這っている。
手を伸ばしてみても、矢張り草は生えている。
じっくり眺める。
(双子葉類。緑、は、天使の羽根の色。あ、緑が目に、そうだ、ピンクに染まる視界がそうなるのだ)
此れ以上考えていたら脳が融けて仕舞いそうだったので、
眼を閉じた。
目蓋の血管が透けた。
(───まるで、冬虫夏草だ)
夏の終わり、私は何に成れるのか。
きらきら
きらきら
夢の世界。
夢うつつのなか、
草は、ゆっくり枯れていった。
ぽろり、と涙が零れた。
(あ、)
そして私は
静かに呼吸を止めた。
く さが
生え
たら
ご 注意
を
(ああ、あれは身体の悲鳴)
零れた涙が真実であると───
end
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