流れ出る全てに‖如何して同じ痛みに個体差があるのかしら*
私は布団に突っ伏して、小さくうめいていた。
原因は月に一度、女だけの、あれ。
「子宮が痛い。爆発しそう。」
「あら生理?大変ねぇ」
ころころと笑って枕元に生理痛の痛み止を放り投げた。
「…ああそっか、あんた生理痛無いんだっけ。どういう事なの…」
ぐらぐらと痛む頭を押さえながらじろりと視線を向ける。
「うふふ、ラッキー体質!」
「死ねよ」
吐き捨てるように言ったら君は苦笑して私の頭を撫でた。
「…すまん」
「やだ素直。」
「五月蝿い。…気が立ってんだからほっといてくれ。」
自分でも解る。
ピリピリと毛先までが神経になったみたいで、凄く嫌だ。
何をしても何をされても不愉快で。
おまけに全身痛むときた。
何らかのバランスが崩れるのかチョコレートばかり食べたくなるし。
女ばっかり、いや、おんなだから、子宮があるからいけないのだ。
「もう嫌だ。子供なんて要らないのに。子供なんて産まないのに。」
逸そこんなものこの世の中で不妊に苦しむ人にくれてやりたい。
欲しがる人に与えられないなんて不平等だ。
なんで使いもしないものの為にこんなに苦しまなくちゃいけないの。
子供を産むって云う尊い行為をするために、如何して月一で苦しまなくちゃいけないの。
かみさまって、残酷だ。
「…いたいね」
ぽたり、と腕に雫が触れた。
「…───なんであんたが泣くんだよ…」
痛いのは、私、だというのに。
「ん…赤ちゃん。要らないって云うから。何か切なくなっちゃった。」
「……子供、欲しいの?」
じんじんと痛む子宮。
子供の宮。
誰も崇めない、かみさまの住む宮。
「解らない。でも『子供』って、凄く『女』にとって大切じゃない?」
少女は女になりやがて母になる。
人間の美しい羽化の過程で、醜い世界への転落方法である。
「女にとって大切なら、私は女の子のままで良い」
「そう…?子供って、私の分身がいるようで素敵じゃない。」
するりと自らの下腹部を撫でて、顔を伏せる。
「っははは、私がもうひとり?御免だね。」
一人でも持て余しているというのに、もうひとりなんて空恐ろしい。
「其れに、私は残念ながら博愛主義では無いんでね。一人しか愛せない。」
ふわりと広がった髪に指を絡めて、彼女はそっと唇を寄せた。
「そう…じゃあその子が貴女に愛されてると思うと其れは悔しいから、やっぱり要らない、かな。」
ふふふ、と柔らかい息が耳にかかり、私は少しだけ身を捩った。
「なんだよ、それ」
「うふふ、貴女が博愛主義でなく、また複数の人を平等に愛せる程器用でなくて良かった。」
「…どーせ不器用だよ」
小さく呟いた言葉は枕の中にくぐもって消えていった。
無料HPエムペ!