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憂鬱な朝‖日常#

朝起きたら、少し頭が痛かった。

理由は簡単だ、脳味噌が深く眠っていないから───と言うか、眠れない。

部屋の外からバタバタと大袈裟な跫が響く。

(うるさい)

ぐしゃぐしゃと頭を掻き回して、学校へ行きたくないな、と思った。

行っても行かなくても授業についていけなくなるほど僕は馬鹿じゃない。

でも身体はのろのろとベッドから降りて、学校へ行く仕度を始めていた。

バタバタ、バタバタ、うるさい跫や動作の音が僕の鼓膜を不愉快に振動させる。

(うるさい。…)

左腕が酷く痛んだが、アラベスクを視界に入れたくなかったので確認もしないまま服を着替えた。

何か胃に入れようとして、諦めた。

一刻も早くこの澱んだような空気に包まれた家を出たかった。

飛び出すように外に出ると、空は青くて、少しだけ湿った空気が僕の肺に溜まった。

僕は少しだけ深く息を吸って静かに吐き出した。

何故だか少し目の奥が熱くなったけれど、僕は歩き出した。

朝の空気は爽やかで僕の気分は其の爽やかさに反比例した。

(あー、やっぱ、帰ろうかな)

学校が嫌いと云うわけではない。

寧ろあの澱んだような空気の家に居るより余程マシだ。

ただ、だからこそ、───其の逃げ場を無くしたくなかった。

(笑える自信がない)

無理矢理頬をつねってみても、顔の筋肉は笑顔をつくろうとしない。

口角をぐにぐにと指で押し潰してみるが、なんだか不恰好な笑みになってしまっている。

(駄目だ、やっぱ)

幸い朝早い。

引き返そうと踵を返すと、真後ろに居たらしい人にぶつかった。

「危なっ、…脅かそうとしたのに」

「…。おぉ、おはよ。」

友人に短い挨拶をし、僕は小さく俯いて脇をすり抜けようとした。

「ん、逆走じゃん。サボリ?」

しかし、別に知ったっころで1oも得しない様なことを聞いてくるのが友人というものである。

「そ。だりーから休む。」

へら、と振り返って笑ってみせると、友人は眉を潜めた。

「あんだよ。変な顔。」

友人はじっと僕を見たまま、ぽつりと呟いた。


「───泣くなよ」


僕は素早く友人に背を向けた。


「うるさい、泣いてなんか、ない」



吐き捨てるように言った僕の語尾は、ほんの少しだけ震えていた。



end


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