嗜好‖ピグマリオンコンプレックス
───少女の人形を愛でる事を仮に少女を愛でることに置き換えよう。
私は少女を部屋からは出さない。
少女は鍵付きの鞄の中で私を待つ。
私が鞄を開けなければ少女は孤独のなか只ひたすら私を待つ。
艶やかな髪が鞄一杯に溢れ、ガラス玉の目が私だけを映す。
嗚呼綺麗だ。
少女の眼は美しいものしか見ていない。
くもらない。
私は少女を愛でて愛でて、そっと鞄を閉じる。
お休みもう眠ろう、朝日は目に痛い。
がちり、と鞄を閉めて、太陽なんか見せたりしない。
死んだ光しか見てはいけない。
私は少女を監禁しているような、酷く倒錯的な気分になる。
少女は病的に白くなるだろう。月光とは其れほどに淡く美しい。
かといっても、私はレズビアンでもないしペドフィリアと云う訳でもない。
寧ろセックスするなら歳上の男性がいい。
だが、女心は複雑なのである。
例えば、男になりたい女が女になりたい男を好きになってセックスして、其れは恋愛というカタチではあるのだが
何処かの頭の悪い人間が唱える「一般的な恋愛」とは多少異なる。
一方からしてみればレズビアン、もう一方からしてみればホモセクシュアル的な要因を孕んでいるのだ。
肉体と精神が釣り合って生きていけるなんて稀な事だと思う。
しかし、例え肉体と精神が釣り合ったとしても、矢張り何か違うものを求めてしまうのが常である。
勿論人によってカタチは違う。
加虐嗜好、被虐嗜好、吸血嗜好、窃視嗜好…
私は「美しいものを監禁する」という甘美な嗜好癖を鞄の中に眠る少女達に見い出しているのである。
「と、云う訳だ。誰にでも潜む狂気とは思わないか?」
「狂気とは集団では通例であるが個人では異常だ」
「言ってくれるね」
「君の部屋を占拠する鞄の中身を何の構えもなく聞かされた僕の気持ちを汲んでくれ。」
「きみに感情があったのか。新しい発見だ。」
「言ってくれるな」
くく、と笑って、何だかんだで私たちは似ているんだと呟いた。
其れは狂気か、嗜癖か。
「で、僕は少女を見ても良いのかな?」
「指一本でも触れたら殺すよ」
「聞き損か。」
end
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