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赤い狼‖テーマは赤頭巾



私は赤が好きだ


赤い頭巾を被った

赤い靴を履いた

二、三回鏡の前でステップを踏んで、満足してスカートを翻した

綺麗に揃った草刈り鎌を両手に握って、私は笑う




「狼さん遊びましょう!」




走る走る、は、し、る、

真っ黒なスカート翻し、雄叫び上げて駆けずり回る


「待ってよ待ってよ、止まったら殺しちゃうから」


脚が折れても、肺が潰れても

君だけを殺す為に私は走るよ





「捕まえた」






何度も君を抉ったから、指が固まって動かない

ブラウスも君の色に染まる

動かない君の、歪に膨らんだ腹部に、へしゃげた鎌を押し当てる


君は何を食べたかな


狼さんお腹のチャックを開きましょ

私が知らない君を無くしたい

きっと丸呑みをしたのでしょう


なんてサディスティック!


がり、がりと君の長い毛を噛みながら、ゆっくりとチャックが下りる

その度に君は僅か痙攣する

「御機嫌如何?」

丸呑みにしたそれに話し掛ける

「今日は素敵な日だわ」

ぐいぐいと中でもがいている

生きてる!

ハローハロー新しい世界へようこそ!

まるで胎内の様な安堵感を奪ったのは私なのよ

さぁさぁ笑って泣いて叫んでみてよ


ぶつりと腹を引き裂いて

中を確認する



「───」


胎内には、老婆が一人、息絶えて

寄り添う様に、少女が一人

蠢いていた


少女は真っ赤に染まって

胃酸で剥げた皮膚がぬるりと粘膜の様に絡み付いていた

「今日和、右足が溶けて仕舞ったわ」

「まぁまぁ、赤いお嬢さん赤は御好き?」


「ええとても」




私は少女を切り裂いた




「奇遇ね、私も赤が好きなの」


とっても奇遇でとっても残念


赤いお嬢さんは殺さなきゃ


だって赤は私が好きなんだ



「狼さん、さぁほら息を吹き返して」

チャックを上げれば元通り

お嬢さんは私が引き摺り出して

「早く逃げてさぁ殺して仕舞うわ」

風に靡く銀の毛並みをふわりと撫でて



「つまり愛しているのはあなただけ」



にっこり笑って手を離す



「もう一度、私を探して殺して」


間違えないで、赤い私


「もう一度、一緒に逝きましょう」

笑って、笑って

嫌って、みてよ

「十数えるあいだに、もう一度、」

繰り返し、何度だって

殺してみせよう

其れが君の望む事ならば

「眼をあけて、」




───もう一度、




end


あきゅろす。
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