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メロンパン‖権現が三成好き過ぎる 現#黒家→三


誰かがこっそり鍵を壊した屋上は、其れを知っている一部の人間の中で密かなサボりスポットとして人気を博していた。

そして、家康は三成を探して最終的に此処に辿り着いた。

そして案の定、三成は独り寝転んでいた。

(全く、無防備だな)

家康は、堪えきれなかった笑いを漏らしながら、三成の隣に傅いた。

そして、グリーンの着色料鮮やかなメロンパンを、三成の唇にそっとおしあてた。

「!」

「三成、おはよう」

唇を塞ぐメロンパンに眉を潜めながらも「ひぇ、やふ」と言葉に成りきらない言葉を吐いた。

可愛いなぁと思いながら、スッとメロンパンを引いた。

「如何せ昼飯食べてないんだろう?購買で買ってきた、食べておくといい。」

要らん、と突っぱねられるかと思って居たが、三成は素直に受け取った。

「……すまん」

三成はそう呟くと、もそもそと食べだした。

「はは、気にするな。」

人の良さそうな笑みを浮かべ、家康は三成の鞄な横に有った参考書を拾い上げた。

「図書室のじゃないか。借りたのか?」

ちらりと視線を向けて、あぁ、と三成は素っ気なく返した。

「彼処は随分静かなだろう、如何してまたこんな所で」

図書室とは大概に於いて静かであり、三成にとっては心地好い場所の筈だ。

ぱらぱらと参考書を捲り、其れが量子力学という余りに高校生とはかけ離れた内容に家康は苦笑した。

「図書室は無遠慮な視線に苛々する。長居したくなかっただけだ。」

「無遠慮な視線?」

「大方私のような髪色が珍しいのだろう。黙って居れば解らないとでも思ったのか、彼奴らは。」

苛々としたように吐き捨てた三成に、まぁまぁとか気にするなとか声をかける。

しかし肚の底では全く違う事を考えていた。

(其れは好意と云うんだ、三成)

勿論家康はそんな事を三成に言うつもりは無かった。

「まぁ良かったよ。」

「何がだ」

「図書室は飲食禁止だし、話し掛けたら三成怒るし」

「当たり前だ」

「ワシは寂しい!」

む、と眉を潜めると、三成は小さく笑った。

「家康、お前が此処に居るなら又来てやっても良い。」

「本当か!?」

「私は嘘は言わん。…コイツの礼だ」

漸く半分程胃袋に収められたメロンパンを指し、直ぐに顔を伏せた。

「三成…っ」

可愛いを抑えきれなくなった家康は、三成の身体を掻き抱いた。

「何をする!」

ぎゅーっと腕を押されたが、三成の細腕では家康の腕を解く事は出来ない。

「……勝手にしろ」

根負けした三成がぐったりと身体を預けると、家康は満足したように少しだけ力を緩めた。

「暑苦しい奴め」

「誉め言葉として受け取っておくよ」

三成もまぁ良しと判断したのか、少しだけ表情を緩めながら、参考書を開いた。

(こんな三成を誰も知らなくて良い。ワシだけが、見てれば良い。)



恋心と言うには酷く危うい感情だったが、家康は其の脆さをも楽しんでいた。



end


あきゅろす。
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