黒白ノ風 128 咄嗟 木の影から音を立てずにスッと現れたのは、大蛇丸の一番信頼しているであろう部下、カブトだった。 フードの付いた服を羽織り、出て来ると同時に暗部の面をはずした。 おそらくこのカブトの暗部の格好は木の葉の暗部の姿をし、大蛇丸の部下という本当の姿をくらませるための揺動であろう。 カブトと言えば私の中忍試験、予選の対戦相手である。 まぁ、あの予選の時は双方、どちらも本気を出していなかったためか微妙な戦いであったが。 「君の相手は僕がしてあげるよ」 出てくるなりしゃあしゃあと口を開いたカブト。 「・・・と言うより、君の相手は僕で十分だ」 言葉を更につけたし、自信をあらわにした。 片手でメガネをくいっと上げる様は何度見ても腹が立つ。 「クク、サチちゃんあなたが出てくるのは予測済みよ。手はうたせてもらったわ。私の計画、邪魔なんかされたらたまったものじゃないわ」 続けて大蛇丸も口を開く。 大蛇丸は私がここで計画の邪魔をしに出てくると予測していたのか。 ・・・こんなところでカブトが出てくるとは。 「…はっ」 私は不敵に笑った。 自然と口から笑いがこぼれたのだ。 「…何がおかしい?」 カブトは眉をしかめ、苛立ちを見せながら私に問いた。 カブトの目からは私は嘲笑っているようにでも見えたのであろうか。 「おっかしーね。私の相手がメガネとは。小隊でも組んで来た方がいいんじゃないの?」 計画の邪魔をされると困る…と言い、私を邪魔する大蛇丸。 しかし、少し計算違いがあるようだ。 たぶん私の力を見誤りすぎていると思う。 あれから真白と共に修行も重ねた。 幻術の解き方は万全だし、忍術、5つの性質変化の術も半年ほど前に会得済み。 体術はまぁまぁだが、応用の中の応用を真白にたたき込んでもらった。 まぁそんな感じで邪魔をされる前に私の邪魔する者を倒してしまえばいい。 そういう直接的な考えが私の頭の中にある。 そんな思考をめぐらせていると、その私の思考を汲み取ったかのようにカブトが口を開いた。 「自惚れるなよ・・・サスケ君に呪印が付けられるのも止められなかった君に、何が出来る」 嫌みたっぷりである。 …このメガネは何なんだ。 ザッ 私はその言葉と同時に地面を蹴り、木の影にいるカブトのもとへと接近した。 過去の失態をあざとくほじくられ、少々頭にきたのだ。 あとカブトが登場したというイライラも重なり、気がついたら地面を踏み込んでいたのだった。 「クク、やっと来た」 今度はカブトが不敵に笑った気がした。 ・・・しまった! 私は直感的にそう思った。 急な方向転換でもとの位置に戻ろうとした。 しかし、時既に遅しである。 カブトのもとへと駆けた私。 そのためかほかじい、大蛇丸と私との距離の差が開くわけで・・・ その差が開けた丁度中心辺りに紫色がかかった透明な壁が張り巡らされたのだ。 これは外側に張られている結界と同じもの。 その壁に接触していた草木はメラメラと音を立て、灰になり、空気中に散った。 この壁の恐ろしさがうかがえる光景だった。 ・・・どうしようもない罠にひっかかってしまった。 わざと私を感情的にさせる。 ほかじいを助けたいという願望が強いほど、焦燥感に駆られて衝動的につっぱしってしまった。 …これを狙っていたのか。 私はカブトを睨む。 そのカブトはというと、紫色がかかった壁の隅にいた。 「おー、怖い怖い…じゃあ僕はこれで…」 そうカブトが軽く言うと、紫色の壁が丁度人1人が通れるくらいに開いた。 そしてカブトはそこから出て行ってしまったのだった。 慌てて追うも、壁はもとの形状に戻ってしまった。 …これではもう結界が解けるまで出れない。 「クク、カブト…お疲れ様ね」 大蛇丸の声が紫がかかった不気味な結界の中で、そして私の耳で…響いた。 [←][→] [戻る] |