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黒白ノ風
81 落日
あの後、ガトーはいなくなったものの、タズナのオッサンの護衛を続けた。
一応任務は橋が完成するまでらしい。
私はそれをただボーっと過ごしたと思う。
実際どうやってタズナの家へと戻ったのかは覚えていない。
サクラは大層気にしていたようだが、私自体どう対処したのかは分からない。

今は夕ご飯をタズナの家族と私達第7班の皆で囲んで食べているのだが、なかなか箸が進まない。
箸で酢豚の肉を掴んでは口元へと持っていくものの、また戻す。
それを何度か繰り返した。
それからやっとこ口に放り込んだものの、気分が悪くなった。

・・・駄目だ。
食べることに対し、私自身の体が受け付けないようだ。
食べ切れない。
というより食べれない。
味はおいしいのに…すいません、ツナミさん。
 「・・・もう寝ます。ツナミさん、夕飯おいしかったです」
まとまらない頭のままおぼつかない足取りで私達の休む部屋へと消えた。

私が部屋へと消えた後、皆顔を見合わせていたとか。
しかし、そんなことは気にならない。
私はきちんと敷いてある布団にもぐりこんだ。
脳裏に焼きついた死体の山、再不斬の言葉と白の寂しさを背負った背中。
そればかりが私の中で渦巻いていた。



あの時、もっといい対処法があったはずだ。
人を殺した。
どんな悪人であれ、あの程度なら更生できたかもしれないのに。
私は立派な人殺しではないか。
白を助けるとはいえ・・・
それに再不斬だって、すぐ病院に連れて行けば助かったかもしれないのに・・・
私はただ突っ立って見ていることしかしていなかった。
こちらの世界に来てから一年あまり。
私はその一年、何をして過ごしてきたのだろう。

巻物で修行?
その覚えた術を使わなければまるで意味がない。
スピードが足りない。
もっと強くならなければ。
もっと修行して・・・

あぁ、こうやって考えている時間すら惜しい。
修行をしなければ。
私は布団を振り払い、立ち上がった。

ドアを開け放ち、
 「修行してくる」
と言い、タズナの家を後にした。



湿気の多い木でできた橋の道を通り、森へと向かう。
外はとても暗かった。
月には厚い雲がかかり、月明かりなどは皆無。
涼しい風が吹き抜ける。
それはまるで私をあざ笑っているかのように思えて仕方がなかった。

私は深い森の中で八つ当たりをするように木を様々な術でなぎ倒していった。
術をかけ、もろくなった木を足で蹴り倒す。

チャクラを拳に乗せて木を突いてみる。
コントロールする修行はあまりやってこなかったのであまり効果はなく、拳に血がにじんだ。
そんなことはもうどうでもよかった。
自分の影分身のようなものも作り、それと戦ったりもした。
そうしているうちに時間を忘れた私。



気がついたら夜が明けていた。
そんなことも気にせずに修行を続けた。
昨日昼飯、夕食共に食べなかったものの、自然とお腹は減らなかった。
水さえあればそれでよかった。
 「・・・サチー、タズナさんの護衛するよー?」
その時、遠くから人の声が聞こえた。
このやけに間延びした声はカカシ先生であろう。
ボンッ
私は影分身を一人だけ作った。

そしてそれをカカシ先生の元へと向かわせる。
 「もし、それ消えたら本体が橋に行くから」
「・・・」
そうカカシ先生に言うとまたも修行を再開した。
カカシ先生は少しばかり黙って私の行動を見ていたが、やがて橋へと向うために森を後にした。


その後も私は修行を続けた。

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あきゅろす。
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