[携帯モード] [URL送信]

黒白ノ風
80 終結
 「サチさん、背後からの援護、ありがとうございます」
憎き相手、ガトーを殺した白はこちらに歩み寄りながら言う。
私達の周囲には死体が無造作に転がるばかりであった。
空には灰色の雲がかかっている。



 「…!再不斬さん!!」
私のもとへと歩み寄ってきていた白。
しかし、そう言ったかと思えば慌てて駆け出した。
私を通り過ぎ、大切な人のもとへ駆ける。

白は赤色の散りばめられた橋を駆け、地面に横たわる再不斬のもとへとたどり着いた。
私もそちらへと足を運ぶ。

 「ガトーを殺りましたよ再不斬さん・・・再不斬さん?・・・再不斬さん!」
白が再不斬の体を揺すっている。
…どうしたんだろう。
幾度となく体を揺すっているのだが再不斬の反応はない。

 「・・・」
 「…ったく、うっせぇ、な…」
 「再不斬さん!早く病院に行きましょう」
白は再不斬の安否を確認すると一気に笑顔になった。
それもそうだ。
再不斬は白の最も大切な人なのだから。
しかし、そんな白に再不斬は
 「…いい」
そう短く言った。
この「いい」は行かないという意味。
白の笑顔は戸惑いに変わった。

そしてどもりながら言う。
 「…い、今行けばまだ助 「助からねぇ、よ」…」
しかし、その言葉は再不斬によってさえぎられた。
 「どうしてです!?」
白は再不斬に問いた。
 「自分で、分か、、るんだ。俺は、死ぬ…ってな。クク、」
 「そんなこと…言わないで・・・下さいよ」

再不斬の死を受け止めようとしない白。
そんな白を半分無視し、再不斬は続けた。



 「・・・おい、そこの、、ガキ」
ガキというのは私のことであろうか。
再不斬は弱々しくこちらに目を向けた。
 「お前、の、占いだか…何だか知ら、、ねぇが、話を聞いてやらなくて、済まな…かったな。クク、結果…この、ザマだ」
 「…私の伝え方が悪かったんだよ。こちらこそごめん」
 「・・・やっぱり、、変なヤツだな、お前」

再不斬はそう笑うと、下にうつむく白に向けて言い始めた。
蚊の鳴くような、小さく、かすれた声だった。
 「白・・・・・今まで、済ま、な、かったな、、ありがと、、う」
 「…ボクはすきで再不斬さんについていったまでです…!・・・それに、これで、最後みたいな言い方・・・しないでください…」
 「お前は、自分の、したい…こと、を、、して、自由に、生きろ。俺の後を、追う、なんて、許さねぇ、、から…な。今まで、割と…楽し、か、った、、ぜ・・・」
「嫌だ!いかないで下さい・・・ボクも・・・・一緒に・・・」

 「…じゃ、あ・・・な…」
フ、とかすかな笑みを残したまま再不斬は目を閉じた。
先程まで動いていた口元は、止まった。
白に伝わる鼓動も消え、温かさも薄れてゆく。

 「再不斬さん!!〜ッ!うっ、うっ」
私の耳に入るのは今にも消えてしまいそうな白の弱々しい声だった。



・・・私は今回、何もしない方がよかったのかもしれない。
再不ちゃんは死んでしまい、残されたのは白のみ。
7班のみんなは生きている。
サスケはもちろん仮死状態だった。
今は目を覚まし、物事の状況を確認している。
カカシ先生はかすり傷のみ。

残された白には再不斬を失ったという壮大な傷がついてしまった。
私も援護とはいえ人を殺したということがぐるぐると頭の中で回っている。

私はここに何をしに来たのだろう。
原作を変える?
今となっては馬鹿馬鹿しい考えだ。

私が頭を抱えていると、白が立ち上がった。
涙の跡は消えていない。
私を見やると再不斬をかついだ。
そして
 「ボクはこれで」
と言い、背を向けて立ち去っていった。

その白の背中には、悲しみがずしりと乗っているかのように見えた。
白が去った後の橋。
しばしの沈黙が流れたのだった。

[←][→]

40/47ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!