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黒白ノ風
78 錯覚
周囲の空気が凍りついたような錯覚に陥った。
白の全身からは冷気と殺気が入り混じったものがあふれんばかりに放出されていた。
白は10メートルほど遠くにいるガトーを見据える。
鋭く睨みつけながら目にも止まらぬ速さで走りだした。

ガトーは先程までべらべらと前に出て演説をするように喋っていた。

熱心な演説の途中だったが、流石に自分を殺しに駆けてくる者の存在に気付かないほど馬鹿ではない。
今まで散々再不斬と白をけなしていたのに、いざとなると怖じけづいたのか、ガトーは間抜け面で雇ったしもべ達の後方へと慌てて逃げていった。



白はというと、もうほとんどチャクラが切れた体でガトーに突っ込んでいる。
だいぶガトーに近づいたとき、白の前にしもべが立ち塞がった。
そいつらも金づるのガトーを殺されまいと必死だ。

数はガトーのしもべ達の方が有利だが、白も一流の忍だ。
幼いころから再不斬に暗殺戦術をたたきこまれていた。
そこらのチンピラが束になって襲いかかってもかなわないであろう。



ガトー方向からはLet's Bigin!などと頓狂な雄叫びが上がっている。
しかしそれはものの数秒で断末魔へと変わった。
白に襲いかかった多くのしもべ達は鮮血を流し、地面にすいこまれるように次々と倒れていった。

私いてもたったもいられなくなり、応戦する。
 「白、フォローするよ。」
 「…水遁・鉄砲水」
水辺での水遁は地の利がある。
周囲にある水分を操作するだけでお手軽鉄砲玉が作れるのだ。

白の攻撃が届きにくい中、遠距離にいる敵目掛けて放つ
水鉄砲といってもそんなかわいいものではない。
水の塊をチャクラで形態変化して氷柱のように鋭利にし、放つのだ。
ヒュンヒュンと風を切る音を立てながら敵を貫通していく。



白は千本を投げ、的確に相手の急所を射抜く。

今の白にもう術を使える程チャクラはない。
だから攻撃はすべて千本で行っているのだ。
改めて見るとナルト、サスケと戦っていた時とは千本の使い方がまるで違う。
本気で殺しているのだ。
それほどまでに白の怒りは自らの常識の範囲内に収まっていないことが伺える。

・・・これは…白が優位な状況下にいる。
しかし、そんなことは始めのうちだけに過ぎなかった。
やはり、手負いの忍では数に対応し切れない。



 「…くっ」
白の相手の数が多すぎる。
右から攻撃が跳んで来たかと思えば左、前、後ろ、四方八方から攻撃が次々に飛んでくる。
なんせ白は敵のど真ん中にいるのだから当たり前だ。

考えもなしに敵地に突っ込むとは、白は冷静さを欠いているだろう。
普段、頭のキレる白からすればこの行動はありえないことなのだから。

そんな白に刃物が迫る。
白はそれをはじいたりよけたりする。

捌ききれなさそうな攻撃の主は私が黙らせる。
手加減は必要ないと思った。

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