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黒白ノ風
75 質疑
白が何故カカシ先生に致命傷を与えていないのか、分かった気がする。
正確には、致命傷を与えていない。
ではなく与えられない状態にあると思う。

なぜならカカシ先生めがけて飛ばすはずの千本のほとんどが空を切り、無造作に地面へと転がり落ちているからである。
カカシ先生に狙いを定めず千本をがむしゃらに投げる白。
どうやら白は自分のせいで再不斬に怪我を負わせてしまったと思い込み、そのせいで平常心を失っている模様。
だからカカシ先生は健在なのだ。



大層運が悪くない限り、カカシ先生は何とか大丈夫であろう。
私はきびすを返すと再不斬のもとへと駆け寄った。
再不斬は、先程カカシ先生の雷切をくらったことで倒れている。
この再不ちゃんの状況、今ならゆっくりと話しができるだろう。
そう思い、駆け寄ったのだ。



 「フン、笑いに・・・来た、のか」
私の気配を察知したのか再不ちゃんは顔だけをこちらに向け、言った。
倒れながら浅い呼吸なっているにも関わらず、放たれる殺気は今も健在である。
それにしても、再不ちゃんから話しかけてくるとは何とも意外だった。
無視されるか話しも聞いてくれないと思っていたのだけど。

 「何で橋に来たの?」
私は一番の疑問を投げた。
 「カカシに、借りを返したくてな。損得じゃねぇんだ。俺とアイツならできた。クク、お前がいると・・・厄介なことになりそうだったから、お前がいないのを見計らって、橋を襲撃させて、もらった」
 「来ちゃ駄目って言ったのに」
 「そう、かもな。今や鬼人、と言われた俺でも、この有り様だ」

 「・・・白あのままでいいの?色々混乱してるよ」
私は白が作った氷のドームを見ながら言う。
未だにドームはカカシ先生を閉じ込めたままだ。
 「所詮、人間といえども、道具は道具。壊れても何ら支障は、ない」

 「へぇ、そう言っているところを見ると支障ありありに見えるよ。あれ以上白に無理させたくない、ってね。そうでしょ」


 「・・・ハッ!そんな訳無い、だろう
・・・・・と言いたいところだがな・・お前が言うことはまぁ、当たって、いるな。まるで見透かされ、ている・・気分だ。カカシの、幻術のハッタリとは…違う。本当に・・・・未来が、見えて・・・・いるような…」
 「見えてるよ」
 「フン、そうか、俺は・・死ぬの、か?」
 「死なせない」
 「ます、ます・・おめでたい、奴だな、お前。もっと、違う、状況下、で、会って、いたら、よかった、かも、な」
 「・・・?そうだね」
再不ちゃんの呼吸が更に浅くなってきた。
普段強気な言葉しか出ない口からは今や弱音しか出てこない。
何故こんなに弱っているのだろう。
カカシ先生の雷切は脇腹をかすっただけだというのに。

 「・・・フン、俺が、こんなん、じゃ、もう、意味、ねぇな・・・」
再不ちゃんは弱々しく言うと自らうつ伏せになり、手に力を込めた。
立ち上がろうとしているのか。



私がそう汲み取った頃には再不ちゃんは片方の膝を地面についた状態になっていた。
 「・・・っ!?」
私は驚きの声を上げた。
驚きすぎて声にならなかったのだが。

なんと、脇腹がえぐれて、そこからとめどなくどす黒い血が流れ出していたのだ。
雷切はかすっただけではなかった。
再不斬の腹をえぐっていたのであった。
先程、再不斬の息がしだいに途切れ途切れになっていった。
その決定的な原因は脇腹にあった。
見落としていた。
私は何を見ていたんだ。
真っ先に傷の容体を確認するべきだった。

地面にできたどす黒い血だまりはみるみるうちに広がっていった。

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