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黒白ノ風
73 雷切
私は目を疑う光景を目の当たりにした。
雷切を発動し、目にも止まらぬ速さで突進するカカシ先生。
その先には忍犬達から解放された再不斬。
ここまではいい。
しかし、その再不斬の前には白がいたのだ。

白は再不斬が忍犬達から解放されたというのに、雷切を発動しているカカシ先生の前へと立ちはだかっている。
まるで死にに来たかのようである。

自分はもう再不斬の必要としていた道具ではない。
存在する理由が無くなってしまったと言っていた。
ただ、のたれ死ぬより最後まで再不斬の道具として死んだ方がいいと考えたのだろうか。
白を突き動かすものが何なのか私には分からなかった。



あのままでは白に雷切が…
そして白の読み通りになってしまうのか。
私は地面を踏み込み、駆け出す。
…駄目だ、間に合わない!

そんな私の思いとは裏腹に青い雷は白に接近する。
一歩、二歩…カカシ先生が地面を蹴る。
時間が止まればいい、そう思った。

その時、
はっとしたように再不斬が動いた。
 「何してる!」
白に一言怒鳴りつける。

再不斬は白の腕を掴み、力任せに横へと投げた。
そして、再不斬自身もその反対側へとよけたのだった。
…雷切は一点集中の突き。
軌道を見極めて横へとよけてしまえば当たらなくなるのだ。

ズザッ
再不斬に投げられた白はというと、受け身もしないままただ地面へと倒れ込んだ。

 「ぐっ!」
小さな声が上がる。
この声を発したのは白ではない。
再不斬だ。
何が起こったか理解も出来ないままお白はそるおそる声のした方へ顔を向けた。



 「・・・!」
案の定、白の目の前には苦痛の表情を浮かべた再不斬がいた。
 「ざ、再不斬さん…」
先程カカシ先生の雷切をよけるべく白を横へと投げ、自らも横へとよけたつもりの再不斬だったが、どうも雷切を脇腹にくらったようだ。

一瞬の出来事だった。
私は何も出来ず、ただただ見ていることしか出来なかった。
駆け出していた足をぴたりと止める。
再不斬の体が傾いた。
重力に従って再不斬の体は地面に吸い込まれるように地面へと倒れていった。
 「再不斬さん!」
それを白が支える。
 「再不斬さん!再不斬さん!!」
浅い呼吸を繰り返す再不斬は白を睨みつけた。
 「・・・テメェにあんなこと、教えたつもりは、ねぇ、ぞ」
 「・・・すいません…ボクは…」
 「フン、謝ってる、暇があったらカカシの奴を、倒してこい」
再不斬は鼻を鳴らすと白にそう言った。
まだ話せるほどの元気はあるようだ。
 「・・・ハイ」
白もそれに承諾すると顔を上げ、静かに立ち上がった。
そしてカカシを見据える。
もはや霧の晴れた橋に沈黙が流れたのだった。

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あきゅろす。
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