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黒白ノ風
71 存在
 「サチ、そこをどけ」
 「嫌」
私達はしばらく睨み合いを続ける。
殺気を真っ正面から当てられる私。
それに負けじと応戦するも、ナルトのほうが優位なことは明らか。

なんせ私に様々な理を教え、修行をつけてくれた人物なのだから当たり前だ。
しかし、そんなナルトも目で見て分かるほどの取り乱しようだ。
サスケの安否を確認し、一度は落ち着いたものの、また殺気を向ける。
サスケが殺されたことに対する動揺か、はたまた下忍になりたての奴にかばわれたことに腹が立っているのかは定かではない。
ナルトはクナイを構え、今にも飛びかかってきそうな勢いである。

しかし、もし今私がどけば戦意喪失した白をナルトが・・・
それだけは私としては避けたい事だ。

それより、何故白が戦意喪失しているかというと…
白は再不斬の戦闘における道具として再不斬についていた。
そういうわけなのだが、ナルトとの戦闘において白はナルトには到底かかなわないと悟る。
しかし、再不斬が白に求めるものは確実な強さ。
白がナルト、敵ににかなわないという時点で戦闘における道具という意味が無くなってしまった。
だから戦意喪失しているのだ。

それどころか殺してもらうのをいまかいまかと待ち望んでいるようにも見える。



 「・・・」
 「・・・?」
ナルトの殺気がおさまっ…た?
突如痛いほど私に当たっていた殺気が和らいだ。
 「・・・考えがあるならサチの勝手にしろ。俺は・・・頭を冷やしてくる」
どうやらいつもの冷静なナルトに戻ったようだ。
ホッと一安心する私。

しかし、その様子をよく思わない人物が1人。
 「ボクは敵なのでしょう?何故殺さないのですか」
白だ。

再不斬の強い戦闘道具になるという存在理由を奪ったナルトに対して言っているようだ。
しかし、ナルトはもうどこかへ行ってしまった。
けれども白は続ける。
 「サチさんも勘違いしているようですね。倒すべき敵を倒さず、かばい、情けをかけた・・・命だけは見逃そうと」
今度は私に言っているようだ。

 「勘違いはしていないよ。このスタイルが私にとっては当たり前だから。私情で誰かを殺すことは、出来ないよ」
私はそれに答える。
この世界では甘い考えだということは知っている。
いくら忍になろうとも人の根底は覆らない。



人は殺せない…私のその言葉を聞いた白は重い口を開く。
 「知っていますか。誰からも必要とされず、ただ生きることの苦しみを」
白からの突発的な質問。
白にとっては再不斬が全て。
白の中では再不斬中心に世界が回っていると言っても過言ではないだろう。
 「知ってる…と思う」
私はしどろもどろに答えた。
その依存という気持ちは私には分からない。

 「・・・まぁ、分かる分からないはおいておきまして、ボクにはもう存在理由がない。先程の方に奪われてしまった」
 「理由ってさ、必要なのかな?」
 「・・・ボクにとっては最も大切なことです・・・サチさん、ボクを殺して下さい」

 「嫌」
私は即答した。
白を助けようとしているのに殺せないよ。
簡単に死のうとしないで欲しい。
そんな思いから拒絶の言葉が飛び出した。
 「・・・何故です?」
 「助けたいから。そんだけ」
 「ボクは敵ですよ」
 「私はそう思ってない」



 「サチよ!」
白と話している途中、突然真白が乱入してきた。
 「取るに足らないことだと思うが、誰かが犬を口寄せした。それだけ伝えに来たのだが…」
真白は報告だけをする。
 「え!・・・連れてって!!」
その内容を聞き、私は焦る。
“犬”ということはカカシ先生が忍犬を・・・
霧の中で目をつむり、攻撃を仕掛けている再不斬は忍犬達にとっては恰好の的。
大変だ、一刻も早く止めなければ。
私は真白にまたがった。



 「白はそのまま待ってて!・・・こっちに来たら許さないから!」
そう残し、真白と共にこの場から立ち去った。
間に合え、間に合え…そう呟きながら。

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