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黒白ノ風
70 本気
 「この辺りで金髪小僧のニオイがする。ここでよいか?」
真白は辺りを見回しながら言う。
まぁ見回すといっても霧が濃すぎてよく状況が把握できないのだが。
真白がいう金髪小僧というのは、おそらくナルトのことであろう。

兎の姿の時はなかった嗅覚。
狼の姿になったことでだいぶ鼻が利くようだ。



 「ん、ありがと」
私はお礼を言い、真白から降りた。
ふさふさの毛から離れるのは少々寂しい。
真白にはもしもの時のためにここにいてもらうことにした。
私が最も速く移動できる手段だからだ。
いるのといないのではとても違う大きな存在なのである。

私は真白を残し、ナルトのもとへと向かおうとした。
瞬間、
辺りに膨大な殺が満ちた。
上忍でもすくみあがるほどの殺気。凄い。
私の恐怖心は少々。

この殺気は…誰だ?
今まで感じた誰のものとも一致しない。

しかしここでボーッと固まっていてもどうにもならないことは分かっている。



よし、行こう。
意を決して殺気の中心へと走り出した。
ピンと張り詰めた空気が体中にひしひしと伝わってくる。
四方八方濃霧で覆われているため、この膨大な殺気だけが頼り。
手探り状態だが、何とか気配をつかめた気がする。
懐かしいような懐かしくないような・・・

・・・そうだ、この殺気の感じは・・・ナルト?
私は走りながら思いふける。
何故ナルトから発せられる殺気という憶測を立てれたのか。
一回修行中にふざけすぎて殺気を当てられたことがある。
その時の殺気と一緒だったからである。
何故ナルトはこんなに殺気が漏れるほど怒っている?
一体何が!?
それにしてもナルトが怒るとは、よほどのことがあったのだろう。
私は思考をめぐらせ、霧の中を闇雲に突き進む。



少し進んだころ、霧の向こうから人の声がした。
私はそちらに耳を傾ける。
 「・・くそ・・何でコイツが俺をかばうんだよ!?」
ナルトの声だ。
 「この殺気・・・君もサチさんと一緒ですね。それも演技が板についていますね。」
白の声もする。
 「しかし、演技が仇となりましたね。友を殺す羽目になるとは」
 「うるせェ・・・」
バキッ
木の何かが割れる音がした。
おおかたナルトが白を殴ったりして面を割ったのだろう。

 「流石、木の葉は粒揃いですね。キミも実力を隠していなければこんな事にはならなかった」
 「テメェはぶっ殺す」
ナルトの殺気が先程よりも大きくなった。

背筋が凍るとはこのことか。
ナルトは本気だ。
本気で白を殺そうとしている。
・・・見ている場合じゃない。
止めなければ…
きっとサスケは仮死状態。
ナルトはサスケが殺されたことに対して怒りを露わにしているのだ。



 「ナルト、ストップ!」
私は意を決し、ナルトの真ん前に出る。
危険は百も承知だ。
刹那、私の目の前に鈍く黒光りする物体が通過した。
私はその黒い物体の存在を完全に通過してから気がついた。
やはり視界が悪いと何が起こっているのか分からない。
先程目の前を通過した黒い物体・・・
そうだ、クナイの切先が私の頬をかすめたのだ。

・・・危なかった!
表面には出さないが、心の中ではプチパニック状態。
いつ死んでもいいとか思いつつも心臓バックバクである。

 「…サチさんではありませんか。あなたもとことん甘い方ですね。忍は殺るか殺られるかのどちらか。そういう世界ですよ」
私の姿を見かねた白は私を鋭く睨みつけながら言った。

 「甘いのはどっちだろうね。見れば分かるよ。サスケは仮死状態だね。私、医療をかじってるからその位分かるよ」
私は最もらしいことを言う。
それと同時にやってもいないことを平然と吐き捨てた。
しかし、いつか医療忍術はやってみたい。
予定だからかじっているということにして頂ければありがたい。

 「いい奴でも、優しい奴でも、敵は敵だ。サチ、そこをどけ」
サスケが無事ということを知ったナルト。
幾分か殺気は収まったものの、未だに先程の感情を引きずっているようだ。

そんなナルトを見据え、私は
「嫌」
そう短く言った。
どくかどかないか…
私にとってその答えは言うまでもなく明らかだった。

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