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黒白ノ風
65 決裂
パタン
と音を立て、ドアが閉まった。
私はその音に振り返ることなく真っ直ぐ前へと向いている。
 「そこらへんに掛けて下さい」
白は部屋の入口で突っ立っている私を見やり、言う。
私は白の声をもとに座れそうな場所を探した。
しかし、この部屋にはベッドが一つあるばかりである。

 「・・・」
そこらへんといいましても、普通のどこにでもありそうなベッドしかありませんよ。この部屋に。
空気イスか?空気イスしろって言ってんのか?
ちょ、それは難しいって。

私は様々な思考の末、ベッド付近の地面へとよっこらせと座り込んだ。

すると、それを見た白が一言。
 「…何してるんです?」
痛いものを見るような目で私を凝視する白。
 「いや、あの座ったんだけど・・・」
私はしどろもどろに答えた。
 「僕は掛けて下さいと言ったんです。掛けると言えば椅子など上部にあるものに腰掛けるといった感じでしょう」
白は平坦な声でぴしゃりと言う。
敬語で言われると普通に言うより心にぐさっとくる。
あの鋭い眼光も凄みをきかせている。

 「アナタの掛けるところはありませんが、再不斬さんのお客さんである以上仕方なく部屋に招き入れたのです。アナタはのこのことやってきて座って対等な立場でお話しできると思っているのですか?」

 「ア、スミマセン」
そういえばナルトから一般常識に欠けてると言われたことあったな…
こういうときどうしていればいいんだ…
とりあえず立つことにした。

 「再不斬さんを見下ろす気ですか…いい度胸ですね」
「・・・」
あれ…
なにこれどうすればいいの。
やっぱり空気イスが正解では。え、いやベットが正解か…
…それより、やっぱおかしいぞ?
敵意むきだしじゃん。
この人、こんなに腹黒だっけ。



 「そのへんにしとけ、白」
ベッドから声がした。
先ほどから私達のやりとりを黙って見ていた再不斬が口を開いたのだ。

 「あは、そうですよね再不斬さん」
白はその一言で先程の態度とは一変、鋭い眼光、痛い物を見るような目などは変わり、にこやかになった。

 「仕方なく用意しました。座ってください」
白はどこから取り出したのか木製の椅子を目の前に置いた。
「・・・」
とりあえず言われたからには素直に座っておく。



 「話は白から聞いている。交渉の内容を手短に話せ。横になってる俺を見て襲ってこねぇってことは敵じゃねぇってことは分かるからな」

…交渉を聞いてくれるのか!
一筋縄ではいかないと思っていたが、あっさりと第一関門突破だ。
…手短にか。
よし、簡潔にまとめるぞ。

 「私の占いによるとあなたたちに1週間後災いが降りかかる。そのため橋を襲撃はやめておいた方がいいです」
本当に簡潔に話したつもりだが。
 「長いですよ。10文字以内でお願いします。再不斬さんのお体に響きますから」
と白。

 「橋を襲うな」
これでいいだろう。と私。
 「再不斬さんに向かってタメ口とはいい度胸してますね」
「・・・」
私は何をしにここに来たんだ。
戯れか、なにかを試されているのか。



 「・・・白、そのへんにしとけ」
またもや再不斬。
 「そうですよねー。再不斬さん」
またもやにこやかになる白。


白をストップさせた後、再不斬は私に向き直り、真剣な面持ちで話し始めた。
「面白いヤツがいるからと話を聞いてみたが・・・テメェに指図される筋合いはねぇ」
「・・・」
やはり交渉材料が弱いか。
しかし面識ないうえ共通の考えもない。
私に用意できたポッと出た占い師設定だけだ。

やはり無理なのか。
私は心の奥底でうなだれた。

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あきゅろす。
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