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黒白ノ風
60 拘束
私の手は白の腕を捕らえて離さない。
掴んでいる腕には鋭い銀色の千本。危険だけれどそれは百も承知だ。

人を殺すことより拘束、つまり捕らえるのはもっと困難を極める。
まぁ私にとっては人を殺すということの方が難しいのだが。

しかし私にはそんなことは絶対に出来ない。これは言い切れる。
暗部に入って1年経つにもかかわらずまだ出来ないでいるのだ。
なので私に舞い込む任務は殆ど極秘の巻物などの運搬、ほかじいやお偉いさんの護衛のみ。
暗殺とはほど遠い任務だ。もし暗殺の任務が来てしまったらナルトに任せている。



しかし今は白だ。
 「少しでいいから聞いて」

しかし、白は聞く耳を持たないのか私の拘束から逃れようと腕に力を入れる。
すると力を押し負かされて白の千本の切先が私に迫る。

思っていたより力が強い。
相手は遠距離攻撃の得意な忍だから私の方が力が強いとたかをくくっていたのだがそれは違ったようだ。

 「・・・ちょ、話がしたいだけなの…」
私も負けじと手にチャクラを放出し、押し戻す。
辺りは緊迫した空気が漂う。
2人とも硬直状態だ。
 「・・・」
 「・・・」
いつまでこの状態がつづくのだろうか。まるで力比べをしている気分である。



本当にどうすればいいのだろう?
敵意がないことを示せばいいのか。しかし、それは先程からしていること。
・・・それよりも敵意がないことを示すには…

…痛いのは嫌いだけど・・・
そう思いながら私は力を抜いた。
すると当たり前のように白の持っている千本が私を直撃するわけである。
 「!?」
グサッ
いきなり力を抜かれた白。私の予想外の行動に対応しようと千本を引っ込めようとしたのだが、それも虚しくそれは今私の肩にささっている。

右肩を襲う鋭い痛み。私はその痛みに顔をしかめながら
 「話しだけでも聞いて」
と言った。



 「・・・」
私の右肩に刺さった千本が服を赤く染めていくのが見えた。
赤は肘から滴り落ち、地面に赤い花を咲かせている。

 「・・・話して下さい」
私の様子にとうとう観念したのか白は手に込めた力を緩め、言った。
 「マジ!?」
私は一息ついて言う。

白が本当に優しくなかったら今頃利き腕使えなくて反撃出来なくて心臓ぐさっと一発刺されて終わりだったのだろうな。
…今思うと私も大層な賭けをしたものだな。



私が自画自賛していると、
 「右肩出して下さい」
と白は言った。
私の血が滴る右肩のことだろう。そう思い、未だ千本の刺さっている右肩を素直に前に突き出した。
 「見ない方がいいですよ」
 「?」
そう言ったかと思うと白は千本に手をかけ、抜き始めた。

 「あぎゃあ!」
予期しない突然の痛みに思わず声を上げてしまった。
痛い。
予想外の痛みほど驚くものはない。

 「…抜く時位言ってよ!」
 「抜きますしたよー。はい、言いました」
 「・・・」
あれ、この人こんな感じだったっけ?
なんか悪魔のような…記憶が曖昧で原作が・・・



そうこう考えているうちに右肩からとめどなく溢れる血を白は見事に止めた。
そして丁寧に包帯まで巻いてくれた。

右肩の応急処置が終わり、白は私に問う。
 「…話とは何ですか?」
 「あぁ、そうだった・・・あのね・・・」
私は覚えている限りの原作を白に打ち明けた。
何もしなければ何も始まらない。言おうと思ったきっかけはそこである。

なるべくいい答えが帰ってくるように…そう思いながら話したのだった。

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あきゅろす。
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