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黒白ノ風
589 天秤
日にちも経った。
気持ちの整理もだいたいはついている。
今なら私が考えようとしなかった理由を言えるかもしれない。






元を辿れば、
木ノ葉の里に柏一族が滅ぼされた…
というのが里抜けをした理由だ。

実を言うと柏一族には特にこれといった感情はない。
一族の人と話したことすらないし、私がその末裔だという意識もあまりない。

私は里抜けの理由を今まで深く考えようとしていなかったのだ。

それ以前に私に里抜けの理由を聞いてくる人があまりいなかったのも原因の一つだ。







ーー『サチはサソリと飛段と角都を得ていながらも何も失っていない』ーー
里抜けをする時、サクラはそう言った。

あの時失ったものを考える余裕がなかった。
過去の自分がしたことへの後悔と、里抜けの罪悪感で押し潰されてしまいそうだったから考えるのを止めた。

だけど今なら・・・




得たものはサクラの言うとおり、サソリに飛段に角都。
死んでしまうはずだった暁の大切な人達だ。

対して、私が失ったものは…







・・・木ノ葉の里という居場所だ。




暁と木ノ葉の里、どちらか片方に加担すればするほどもう片方を失う。
私は暁に加担しすぎたのだ。




まぁ、だいたいの整理はつけたつもりだ。
私は伏せていた顔を上げ、ナルトをまっすぐに見つめた。
 「・・・」
今から、ナルトに…
暁との関係を話したらナルトはどう思うのだろうか。
良くは思わないだろう。

しかし、ナルトには言っておいた方がいい。
そんな気がした。

 「・・・」







 「…サチ、やっぱり…」

 「・・・んー…今になってみると、何で里抜けしたか自分でもよく分からないんだけどさ」

私からは何も出ないと思ったのか、ナルトが話を中断しようとした。
そのナルトの声を遮って言葉を発する。

…もうこの際だ、ありのままをナルトに話してもいいと思う。





 「一回しか言わない。しかもナルトが聞いたら幻滅するかも。良かったら聞いてて」

 「あぁ。俺もサチに話を聞いてもらったからな。聞くぜ」





 「そか、」
ナルトの優しさに安心しながら、私は結界をはった。
これで私とナルトは外界からは見えないし、音も聞こえない。








 「んじゃさっそく・・・私には木ノ葉の里と、…暁という大切なものが2つあった。
暁と始めて知り合ったのは・・・暗部の潜入捜査の時だった」

 「あの5ヶ月の長期任務の時か…」

 「そ。その時から不定期だったけどしばしば暁と交流してた・・・
一緒に修行したり、料理食べたり、買い物行ったり、リーダーからかったり、実験体にされたり…ほんと色々した」

楽しかったな…。




 「だけど・・・
暁は木ノ葉の里の、忍五大国の敵・・・
木ノ葉の里と暁…両方とも持っていることなんて出来ないのは薄々分かってた。いつかはどうにかしようと思ってた」





 「・・・けど、どっちも大切だったから、あの時まで決めれずにいた」







 「私が里を抜けた時…
選択を迫られた・・・
その時に、暁を選択しなければ暁の中の大切な人が欠けてしまう状況だった」

 「いや、それまでも…暁から我愛羅を奪還する時も私は暁を選んだ」









 「ナルトの術で角都がやられそうになって、色々な思い出とか出てきて、角都を失うくらいなら…って思って
木ノ葉の里を失う決意が出来た・・・

私、柏一族ってとこの末裔らしいんだけどさ、その一族が木ノ葉の里に滅ぼされたらしいから、そのことを理由にして木ノ葉の里を抜けた」







 「そんな感じかな…?」
ナルトに話しながら自分の中でも整理することが出来たように感じる。


 「・・・」
ふとナルトを見る。
規則的に無言で木々を伝っているが、その心情は読めない。


 「・・・ナ、ナルト…?」

 「・・・」
ザッ
ナルトは木を伝うのを止め、いきなり地面に降り立った。

ザッ
私も地面に降りたつ。
ナルトはその場で止まったままだ。

森の静けさが沈黙を更に引き立てた。


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あきゅろす。
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