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黒白ノ風
584 拗兎
「ふむ、やっと行ったか・・・」
「・・・」
真白が人に向かって敵意をむき出しにすることは少ない。
今回のことで何が着火剤になるのか少しだけ分かった気がする。





「さて、サチよ…トビとやらに殺されかけたというのはどういうことだ?」

長門さんたちが出て行った入り口を見ていた真白はふと振り返り、私に質問を投げた。




「いやそのまんまだけど…」




私の発言を聞き、ピンと立っていた真白の耳はみるみるうちに垂れ下がっていく。

「そんなことになったのに我を呼ばなかったのか・・・」




「・・・」
真白たん、本当にすねてたのか…
これは・・・かわいい。






「サチにとって我は頼りないか?」
「いやいやそんなことないよ!」
むしろ今回の長門さんとの戦闘で恐怖を覚えるほどだったよ…


「真白たんを呼び出す余裕がなかった。不意打ちされて致命傷負ったからさ…」

「・・・そうか。なら致し方あるまい」







色々と落ち着いて真白に対して申し訳ない気持ちになってきた。

柏一族のことで少し真白とごたごたして、それがとりあえずおさまった時に

―…真白!あの、私が口寄せしたら来てね!!…絶対だよ!―
なんて言って。

真白に何の連絡もなしに里抜けて、殺されかけて…



あれ、整理してみたら私すごい迷惑なことしてるよ…。

「うおお…!私なにしてんだ・・・!」
無性にあたまを抱えたい気持ちになった。




「どうした?サチ、ご乱心か…!?」

「・・・うん…あのさ、自分で呼び出すから来てね、なんて言っといて呼び出さなくてごめんね・・・今度何もなくても呼ぶからさ!」

「そんなに気に病むな…次また呼んでくれればそれでいい」

真白に優しい言葉をかけられて頬が緩む。





「サチ…」
「真白…!」


真白に駆け寄ってみたところ真白もこちらに向かって走ってきたので両腕を全開にして真白を抱き上げた。

「ウフフ真白〜」

ふさふさの真白を抱えながらくるくると回ってみる。















ここで私と真白を傍観していたナルトが一言。
「・・・俺帰るわ」
何がいけないものを見てしまったかのような顔をしていた。

確かに洞窟の暗闇で兎と人間がキャッキャウフフしていたらいたたまれなくなるのもわかる。




「いや、気遣い無用だ。我もサチに乗せられすぎてしまったようだ・・・我はこの辺で帰るとしよう」
ナルトの申し出に対して真白は一歩ひいた。




「ん…真白たん、またね?」
名残惜しそうに真白を手放した。

「・・・あぁ」




トン…と地面に降り立つと再びこちらに向き直り、口を開いた。

「・・・先ほども言ったが、また口寄せででも、なんでもよいから呼んでくれ」
そう言うと出口に向かって振り返り、ぴょこぴょこと歩いていく。




出口に差し掛かったところで
「…あやつも面白いが、おぬしがいないとつまらん・・・」
あやつとはおばばのことだろう。

そう残して真白は出て行った。

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