黒白ノ風
56 徒歩
「ちょ、まってくれんのか!!!」
少しばかり小話をしながら歩いていると、後方から見えなくなったはずのタズナのオッサンがいそいそと小走りでこちらへと向かってきた。手に持っている酒瓶もオッサンと一緒に揺れ動いている。
「お前たちには親切心の欠片もないのか!!?」
やっと私達のもとへと到着したオッサン。運動不足のせいか、肩で息をしている。
大工やってるんじゃなかったのかよ。と思わせられる光景である。
「え、別に。孫とかいるのかどうかも不明だし。結婚してなさそうだったから」
と私。
「あ、そう思えばそうよね」
とサクラ。
「任務外ですので」
とカカシ。
「ウスラハゲ…」
とサスケ。
皆、酷い言い様だ。
この言葉を聞き、タズナさんはとうとう観念したのか、
「・・・任務外でも、護衛してくれないか?…あの橋だけがわしらの希望なんじゃ」
と言った。
この通りだ。と頭を下げるタズナ。
「…最初からそう言っておけばよかったものを」
カカシはそう言い、タズナさんの肩に手をかける。
どうやら最初から助ける気はあったようだ。
「任務は続行します。困ってる人見捨てるほど忍はお金じゃ動きませんから」
「素直じゃないオッサンだな」
私はそう言いオッサンを見やったのだった。
…ということで私達はタズナのオッサンの護衛を続行することになった。
敵などが出てきたら少しやっかいだが出てこないことは知っている。
また少しばかり歩くと水平線が見えるほどの海と共に船繋場が見えてきた。
「わぁお」
私は言葉をもらす。
そこには5、6人ほどが乗れる船が1つ繋いであった。どうやら人も乗っているようだ。
タズナは船に乗っている人物にご苦労さん、などと言葉をかけている。
知り合いのようだ。
「これから波の国まで船で行く。…じゃが、この船・・・5、6人しか乗れないんじゃよ」
タズナは言う。確かに私達は全員合わせて、6人。全員乗れるじゃん。
・・・ぁ、船漕ぐ人いるじゃん。これでは7人になってしまう。
「・・・いやー、参ったね」
カカシが頭に手をあてながらぽつりと呟く。
「あぁ、そうだ。タズナのオッサンを置いて行けばいいんだよ。うん、名案だね。」
「護衛する人置いてってどうするアホ」
私の提案はカカシ先生に即却下された。
「・・・んー、水面歩行の業出来る人いる?」
カカシは私達に問いただし始めた。
水面歩行の業という言葉を聞き頭をひねる第7班のメンバー。
私も考えにふける。
…水面歩行の業って水の上をチャクラを放出して歩くやつだよね?…木登り出来たからできるかな?
「へーい、私出来るかも」
私は申し出た。
「んじゃあサチは歩いて波の国まで行ってね」
「は?」
一瞬カカシ先生が何を言っているのか分からなくなり、聞き返した。
「ま!俺も護衛してる人から離れられないし、水面歩行の業使いながら移動するとチャクラ消耗しちゃうからな」
「・・・じゃあサチ、ここから真っ直ぐ行ったところに船繋場があるらしいからそこで合流ね。くれぐれもチャクラは使いすぎないよーに」
「・・・」
今更になり申し出たことを後悔する私。
確かにカカシ先生は依頼主から離れられないし、他の3人は水面歩行できない。
だから思いつきで声を上げた私が徒歩になるのは必然的だ。
うなだれながらとりあえず足にチャクラをためた。
ベェェン
…何で音こんなに変なんだろ。
そう思いながら水面へと足を運んだ。
落ちるかな。と思っていたが、私は水の上に平然と立っていた。久しぶりにやったけど、出来てよかった。
「んじゃサチ、また後でね」
「ん」
そう短く返事をし、走り出す。
なるべくチャクラは使いたくない。
夜に暗部の任務が入っているからだ。
こうなっては仕方がない。
私は船着場を発ち、潮風を感じながら海の上を駆けた。
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