黒白ノ風
578 硬直
「グルル…」
喉を低く鳴らす真白は今にも長門さんにその鋭い牙をつきたてそうな雰囲気だ。
「・・・」
いきなり真白の姿が変わったことにより、更に硬直する長門さん。
「・・・」
私も同じである。
はっきりいうと今の真白には恐怖を感じる。
このまま長門さんを噛み殺してしまうのではないか…
目の前にいる真白がいつもの真白だと感じることができなかった。
そんな時、
(案ずるな…)
会話術が耳の奥で響いた。
(我は威嚇しているだけだ…・・・しかし、こやつがこのようなことで引くような輩でもないのが事実だがな…)
引き続き長門さんに唸り声をあげながらぽつりと本音をもらす。
(・・・)
これが威嚇…
にしても私が勘違いしてしまうほど凄い圧迫感だ…
「・・・」
じりじりと間をつめる真白。
長門さんはというと、得体の知れない狼の出方をうかがっているように見えた。
(埒が明かぬな…)
痺れを切らした真白は長門さん向かって飛びかかった。
「・・・」
対して長門さんは突っ込んでくる真白に手をかざした。
ペインの中でも、天道の使っていた引力と斥力の力を利用して真白をはじき返すつもりだろう。
「くっ…」
苦い顔をしながら長門さんは力を発動した。
術の効果を知っていた私は足にチャクラを集中させ、何とかその場に留まった。
だいぶ長門さんと離れているにも関わらず、吹き飛ばされそうなほどの力が私にまで及んだ。
それを目の前で発動された真白はというと…
予想通り、バランスを崩した状態で宙を舞っていた。
あのままでは壁にぶつかる…!
「真白!!」
気が付いたら名前を呼んでいた。
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