黒白ノ風
565 家中
開いてる…
ベランダのガラス戸をすべらせてみたところ、いとも簡単に室内に続く道が出来上がった。
無用心なことに鍵はしていなかったようだ。
「おじゃましまーす…」
急ぎだというのに律儀なことに靴を脱いで、忍び足でそろそろと入室した。
「・・・」
テキトーに廊下を沿って歩く。
そのままつきあたりにあった階段を下った。
人の気配はあるものの、まだ誰とも出くわしていない。
そのことに疑問を抱きつつも足を進めた。
「…真白さーん・・・おーい…」
小声で名前を呼んでみるものの、ひっそりとした室内に反響して寂しさを引き立てるばかりだ。
「・・・」
そういえば最近真白に会ってなかったよな…
いつぶりくらいだろうか…
というか・・・まさか…
「すねちゃったのかな…」
字体的にはかわいいものだが、事態としては深刻だ。
「すねてなどいない」
「…!」
声の聞こえた方向に顔を向ける。
フローリングの床には真っ白の毛をまとった真白がいた。
「真白たん!」
私がそう言ったと同時に真白は地面から跳び上がり、私と同じ目線にある棚の上に乗った。
「久々だな…サチよ…」
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