黒白ノ風
555 対面
私と白は料理を挟むようにして向かい合いながら座っている。
手前の白は正座しながら上品に箸を使って松茸ご飯を食べているところ。
「白ー」
少し様子をうかがってから声をかけた。
「なんです?」
「あのさ、さっきはありが…」
「お礼はいりません。よく考えたのですが、他人かららしくないなんて言われたくないですよね。しかもただでさえサチさんはマイペースですし」
「…マイペースだからこそ誰かが止めないと止まらないんだよね。だからありがと」
…しかも私にとって白は他人じゃないし…
と、独り言も付け加えた。
「・・・なら、なんですか」
白は質問の答えについてきた私の独り言につっかかってきた。
「・・・」
何だかこそばゆいな…
少しためらったが、小さな声で、しかし白にちゃんと聞こえるように言った。
「…さ、さっきも言ったけどさ、家族みたいなものだから…」
「・・・」
「・・・」
「サチさんにしてはいいこと言いましたね。何か変なものでも拾い食いしましたか?」
「・・・あは…」
拾い食いって…
「・・・まぁ、家族ですとか、そう思っていたのはボクだけではないんだと安心しました」
白は箸に持った天ぷらを口に運ぶ。
小気味のいいサクサクという音が部屋に響いた。
「・・・」
「・・・」
“家族ですとか、そう思っていたのはボクだけではないと安心した”…?
「・・・」
「・・・」
一度言葉をバラバラに分解してから繋ぎ合わせた。
そしてその発言の意味を頭の中で必死に理解しようとした。
その意味が分かった時、嬉しくなった。
「…じゃあ、イタ兄はお兄ちゃんだから白もお兄ちゃんねv」
「・・・」
「これからもよろしくねvお兄ちゃ…」
「気持ち悪いですよ。天ぷらを吐きそうになりました」
満面の笑みでピシャリと言い放たれる。
その白の心情を理解した私は食事を再開するのだった。
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