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黒白ノ風
543 諦観
適切な言葉を耳にし、唇を噛んだ私。
白は続けざまに口を開いた。
 「それに…ボクの大切な人はイタチさんだけではありません」


 「・・・」
意味深な発言が聞こえたものの、そのまま耳を通り抜けていった。




私は静かに天を仰いだ。

白によって銀世界になっていた森はいつの間にか氷が溶け、緑に戻り、鬱蒼とした雰囲気をかもしだしていた。


 「・・・」
必然…か。


諦めとか、運命とか・・・
そんなもの今までは跳ね退けてきたけど、今回ばかりはどうにもならない。


…どうにもできない。





 「・・・く…そっ!」
近くにあった木に八つ当たりした。
殴られた木には不規則にひびが入り、そこからゆっくりと後方に倒れて森を揺らした。

 「・・・」
白が心配そうに私を見ていた。




 「…ふぅ。じゃあ行こうか」
それから無理矢理口元を吊り上げ、白に言葉をかけた。

 「・・・ハイ」
白もまた私と同じように返答した。




イタチのいる場所とは逆の方向を向いた。
心残りのないようなそぶりで。



そのまま地面を踏み込んで木に跳び移り、加速してすぐだった。
 「あ・・・れ…?」
視界がぐにゃりと曲がった。

頭から血の気が引いたような感覚と原因不明の目眩に困惑しながら真っ逆さまに地面へと落ちていった。

私の意識はそこで途切れた。

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