黒白ノ風
540 理由
そのまま体勢を崩され、地面に押さえ付けられた。
先程開いた傷が少しだけ地面を赤く染めた。
「…そもそも結界は止まりながら使うものですよ」
そう言う白は誰に言うでもなく呟いているようにも見えた。
「・・・」
ここで私は結界を解いた。
張っていても状況的に無意味だと思ったからだ。
「・・・何で分かったの?」
そして問いた。
「…サチさんがいると思われる空間がぼやけていたというか・・・表現しづらいですね…」
「・・・」
空間がぼやける…か。
この結界は健康状態が悪い時には使わない方がいいな。
「結界には集中力が必要ですから。いくら動きながら使えるとはいえ、怪我もしていますし・・・それに、極度に寒かったり暑かったりすると集中力が低下しますから」
そうなんだ…
「・・・」
自分の結界についての無知さを思い知った瞬間だった。
「・・・だからこんなに温度下げたんだ」
「ええ、聞き分けのない馬鹿でどうしようもないサチさんを止めるためにです」
「・・・」
そうだ。今、私はイタ兄のところに行こうとして白に足止めされているんだった。
「・・・白、何で…?」
「“なぜ、ボクがサチさんを足止めするのか”ですか?」
「・・・」
無言というの肯定を白に示した。
「それは…」
「イタチさんの、最後の願いだからです」
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