黒白ノ風
539 素通
パキ、ピキキ…
耳を刺すような独特の音が周りにこだます。
危険を察知し、私は加速した。
いくら結界で白から見えないからといって足音を消すのは忘れない。
「…!!」
少し向こうにある背の高い雑草の色が変わっていくのが視界に入る。
その雑草には霜が降り、葉の先から氷柱が生えはじめた。
パキィン…
やがて茎が折れ、倒れた。
そうなったのはその雑草だけではない。
先程のような緑の森の面影はなく、少なくとも見渡せる限りが白銀に染まっていた。
この場所はいったい“氷点下”何度まで下がったのだろう?
そう思わせられた。
息切れすら起こしていない白がしろい息を規則的に吐きながら辺りを見回す。
驚いたことに、その白はいつの間にか私の逃げる方向にたたずんでいたのだ。
「・・・」
結界があるのに、まさか、バレた…?
しかし、先程から白は私と目を合わせようとはしない。
…白は私の存在に気付いていないのだ。
これはしめたと思い、白の横を素通りしようとした。
すれ違う寸前だった。
「見えていますよ」
そう白の口が動いたかと思えば、私の腕を掴んだ。
「…っ!!」
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