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黒白ノ風
51 目的
 「そう、4人とも…忍者をやめろ!!」
不合格宣言をもって演習場にしばしの沈黙が流れた。
しかし、アカデミーにも戻らず忍者をやめろといわれたからには黙っているわけにはいかない。

 「忍者やめろってどういうことだってばよォ!!」
沈黙を打ち破ったのはナルトだった。
 「そうだそうだ!」
と何もしていないくせにナルトに便乗して私。
 「どいつもこいつも忍者になる資格のねェガキだってことだよ」
カカシはそう吐き捨てた。
その言葉に反応したのか、サスケは地を蹴りカカシに向かって走り出した。走れ、メロ○!
しかし所詮アカデミー生。
すぐサスケはカカシによって押さえ込まれてしまった。しかもカカシは押さえ込んだ上、意図的にサスケを踏んでいる。
これはサスケにとってさも屈辱的だ。

かくいう私もこれは許せなかった。
気付けば私はカカシに火爆術の球を投げていた。
ボンッ
私が投げた火爆術はカカシに当たる前に爆発する。
カカシはというと爆風で後方へと飛ばされたが、何とかバランスを保って立っていた。

 「…サチ、そんな危ないモノ投げちゃダメでしょーが。・・・とりあえずお前らはこの試験の答えをまるで理解していない」
カカシがこちらに歩み寄りながら言う。



 「答え…?」
 「そうだこの試験の合否を判断する答えだ」
 「だから、さっきからその答えが聞きたいんです」
答えを目前にしてなかなかその答え教えてくれないカカシに対し、サクラがせかす。

 「それは「チームワークだよ」…」
カカシが続ける中、私も答えを言った。
ここで答えを理解していることをカカシ先生に伝えておかなければただ寝ていただけのドベ2になってしまう。

 「サチ、答え知ってたの…ま!これはわざと仲間割れするように仕組まれた試験だ」
 「え?」
 「自分の利害に関係なくチームワークを優先できる者を選抜するのが目的だった…なのにお前らときたら・・・サクラ、お前はサスケのことばかり。ナルト、お前は独走するだけ。サスケ、お前は個人プレイ。最後にサチ、お前は答えを唯一知っていたのに森の中で睡眠・・・一番重視されるのはチームワークだ」
そう言い、カカシはまたもやウエストポーチを探り始めた。そして続ける。

 「チームワークを乱す個人プレイは仲間を危機に落とし入れ、殺すことになる・・・例えばだ」
そう言ったかと思うとカカシはやっとこ立ち上がり、服の土埃を払うサスケを押さえ込んだ。
そして首筋にクナイを突きつける。
クナイは鈍く黒い光を放っている。
 「サクラ、サチ!ナルトを殺せ。さもないとサスケが死ぬぞ!」
サクラは驚愕の表情を浮かべる。
サクラがナルトとサスケを天秤にかけたら絶対といっていいほどサスケを取るだろう。
 「・・・と、こう「キャー!早くナルトを殺さなきゃ!!」…」
私はカカシの発言を妨げ、そう言った。
瞬時にクナイを取り出し、ナルトのいる丸太へと投げつけた。
 「ギャー!!」
奇声を発しクナイを間一髪のとことでよけた。
流石ナルト、必ずしもよけてくれると思ったよ。

 「…サチ、例え話だから・・・ま!最後にもう一度だけチャンスをやる。挑戦したい奴だけ弁当を食え!…ただし、ナルトには食わせるな」
 「え」
 「ルールを破って昼飯を食おうとしたバツだ。もし食わせたりしたらそいつをその時点で失格とする。ここでは俺がルールだ、分かったな」
そう残すとカカシはザッと静かな音を立てて森の中へと消えた。
…まだ近くにいる。私の経験上、カカシ先生の気配がまだこの辺りにあるのだ。
成長したな。私。
おおよそカカシ先生はこれから私達がする行動を観察するために近くにいるのだろう。
私は弁当に手をかけ、口をつけないままナルトに差し出した。
 「はいよ」
(さっきはクナイ投げてごめーんね)
 「…サチ」
(全く、死ぬかと思ったぜ)
この私の行動はちょっとした罪滅ぼしだ。
ナルトにクナイを投げたことの。

 「ちょ、ちょっとサチ、今先生が言ったこと聞いてなかっ…」
 「ホラよ…足手まといはごめんだぜ」
サクラが慌てて私に言う途中、サスケもナルトに弁当を差し出した。
 「・・・・・・」
サクラも意を決しナルトに弁当を差し出した。


(…サチはともかくこんなやつら、はじめてだ…)
そう会話術で呟くとナルトはニコ、と笑った。


…そっか。ナルトは今まで仲間意識の欠片もない暗部で行動してたからきっと戸惑っているんだろう。
何で3代目のシジイがわざわざナルトを下忍にしたのか分かった気がする。
 「はいナルト、あーん」
私はご飯をのせた箸をナルトに近づける。
 「ちょサチってば、そこ目!!」
 「うん、はいあーん」
それを見、サクラは笑っている。サスケは興味無さそうだが。

…どうやら森の中にいた人物が動き出したようだ。
 「お前らあぁあ!!」
カカシ先生が物凄い速さでこちらに迫ってきた。私達の目の前で止まり、にっこりしながら言った。
 「ごーかっくv」
と。



 「お前らが初めてだ。忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界で掟やルールを破るやつはクズ呼ばわりされる。けどな、仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」
かつてのカカシ先生がそうだったように。

自分の過ちを正し、自分のような思いをする者が出ないように後々の者にも伝える。とてもいいことだ。

 「これにて演習終わり。全員合格!」
カカシは親指を立て、なんともナイスなポーズをした。
 「やったってばよ!!忍者忍者!」
ドベのナルトは大いに喜んでいる。
もしかしたら裏のナルトもどこか喜んでいるのかも分からない。
晴れて私達は下忍になった。
これからが忙しい時、気を引き締めて行かなければならない。

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