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黒白ノ風
467 温泉
更衣室には誰もいなかった。
それをいいことに洋服をテキトーに脱ぎ、ぐしゃぐしゃのままカゴに入れた。
その上に持って来たバスタオルを被せれば外からの見栄えはいい。
一応公共の場なのでその辺りはきちんとする。



ガララ
味のある音を出しながら曇ったガラスの戸を横に滑らせた。
むわっと顔や体にあたる湯気がさらに高揚感を高める。

 「うはっv」
早速お湯で体を洗い流してから湯舟へと足を踏み入れた。

…あったかい。
久々の風呂に思わず顔がにやけた。



ザバァッ
その時、隣で湯舟が揺れた。
先客がいたのか。
気が緩みまくりの私は和みながらそんなことを思っていた。
上がるのかな…
随分スタイルのいい人ではないか。
一つに束ねてある深紅の髪や体に滴る水滴が何とも言えぬ艶を出している。

 「…って香燐じゃん」
 「・・・やっぱりサチか」
先客の正体は香燐だった。
私は風呂から上がろうとした香燐を何となく呼び止めた。

 「上がっちゃうの?」
 「・・・あぁ。」
そう言う香燐の顔はどこか涼しげだ。
それ程お湯に浸かっていなかったとみえる。

それだけ会話をすると香燐は再び歩き始めた。
しかしどこか違和感がある。
香燐は私から見て右斜めに傾きながら歩いているのだ。
普通の人には自然に見えるであろうが私の目はごまかされない。

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あきゅろす。
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