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黒白ノ風
380 橙閃
鬱蒼とした森を駆け抜け、通りすぎる木々をただ視界に入れながら進む。

 「・・・」
サクラは
 『サチはサソリと飛段と角都を得ていながらも何も失っていない』
…そう言った。

私も失ったものはある。
得たもの相応に匹敵する大切なもの。
それが目に見えないものであっても、失った本人だから重さは痛いほど分かる。

私が失ったもの。

それは・・・



ドン!
突然の衝撃。
その痛みは背中からじわじわと広がる。

 「うっ…」
あまりにも唐突な出来事だったためか迂闊にもバランスを崩して木から足を踏み外してしまった。

視界に広がるのは茶色の地面と…
・・・今日は運がないらしい。
ごつごつと岩肌がむきだしになった岩があった。
 「・・・!!」
ぶつかる…!



ドッ!
ぎゅっと目をつぶった時、またもや衝撃。
急降下中の体は今度は下からの衝撃により木にたたき付けられた。
 「ぐっ」
左腕と背中と脇腹と、全身が痛くてどこをどうされたか…などのことが把握できない。
しきりに黄色がちらちらと視界に映る。

 「・・・!」
そのまま落下するかと思いきや、木に首を押さえ付けられてしまった。
 「ぅぐ…」
苦しくなる呼吸と、宙吊りになった体。
足は虚しくも空を蹴るばかり。

うっすらと開いた目から確認できたものは…
 「・・・ぅ・・ナル、ト…」

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あきゅろす。
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