黒白ﾉ風
376 失得
「だいぶ前のことになっちゃうけど、サソリと戦っていた時・・・最後にチヨバア様のクグツが刀でサソリを貫こうとした時、赤い球体がどこからか飛んできたの。それはチヨバア様のクグツに当たって・・・刀はサソリの急所を外した」
「・・・」
「後になってから気付いたけど・・・あの術は、サチの術だった」
「・・・」
ばれてたんだ。
「…何でなの？」
「・・・助けたかったから」
「サソリは敵よ・・・暁よ…」
「そんなこと知ってるよ」
「・・・」
「…この前、温泉でさ…失うものもあれば得るものもあるっていう話したよね・・・？私はそれでチヨバア様を失った…」
奥歯を噛み締め、無念の気持ちを未だに引きずるかのように話す。
「サチはサソリを得たよね…？でも私は何も得ていない」
「我愛羅生き返ったじゃん」
「サチは何を失ったの？？」
「・・・」
「今回はアスマ先生を失った…得たものは何もない・・・サチは暁の二人を得た…失ったものは何もない…」
「・・・」
あるよ…
とても大切なものを…
これを聞き流すかのようにせっせと岩を退かす。
「ねぇ・・・」
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