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黒白ノ風
311 白黒
真白は手近な長椅子にちょこんと座った。
私もそれにつられるかのように隣に腰掛けた。

 「初めからゆくぞ・・・時は500年ほど前に遡る…」
 「・・・」
 「我はそのころ、ある一族と親交があった。その一族の名は“柏”…数ある一族の中でも最強と謳われた一族だった。強いながらにしても驕らず、むしろ戦闘嫌いの穏やかにして寛大な者が集っておった。…そのような環境の中に我はいた。そこが我の居場所だった」

 「・・・」
真白は大方2000歳。
500年前に柏一族と出会い、やっと居場所を見つけた…となると1500年もの間何をしていたのだろう…

 「我は当時、ずっと狼の姿だった。皆で協力して食料となる獣を狩り、宴などをして楽しく暮らしていた。昔、ここ一体は全て草原と森林でおおいつくされていたのだ」
 「…へぇ」
 「まぁ、そのようなことは余談なのだがな…それから200年余りの時を柏一族とともに過ごした・・・
人間の寿命は短い。200年もの間、生と死…出会いと別れを繰り返してきた。そして自然に我は親しい者を作らなくなっていった。…皆平等に、柏一族全体と接していたのだ」

 「・・・」
そんな何回も悲しんでいたらきりがないもんね。
 「…しかしそんな時、ある者が現れた。柏一族にして好戦的、仲間思いでどこか笑いの中心になっている、そして誰よりも慕われている者が。
我はそやつのことを“クロ”と呼んでいた。あやつが我のことを“シロ”と呼んだのでな。我が生きていた中で最も親しい存在だった・・・と、まぁこれも余計なことだったか。


 「・・・」
真白がこんな発言をするなんて…
クロって人に激しくジェラシーだ…

 「クロと笑い合い、30年ほどの時が過ぎた・・・そして事件は起きたのだ。今から270年ほど前になるか…」
真白は空を仰ぎ、やけに穏やかに話していた。

そこで何かがあったのだと悟る。
 「・・・なにが…あったの?」
おそるおそる、尋ねるように私は質問をなげた。
 「・・・ある日、一人で狩りに外出していた我が一族の住居に帰ったところ、クロを含める柏一族の者や、住居がきれいさっぱり無くなっていたのだ」


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