黒白ノ風
309 自然
屋根をつたい、徐々にスピードを上げる。
「サチよ」
ふさふさの体毛、どこか威厳のあるような喋り方、そのなかで抜けている部分もあるところがあるのが真白。
ふと真白の声が、姿が頭に浮かぶ。
私と真白の仲。
隠し事なんて許さないよ。
「サチよ」
またもや真白の優しい声が響く。
…って
「・・・え?」
後方から幻でもない、本物の真白が私に話し掛けているではないか。
「真白…何で…」
口寄せの術をしても来なかったのに。
私の疑問に真白はすぐに答えてくれた。
「・・・近くにいたのでな…口寄せではなく直接来てしまった・・・それより今、時間は空いているか?サチよ…」
「…うん」
…紛れも無い本物だ。
まさか真白から来るとは思ってもいなかった。
この口ぶり…話してくれるのか。
柏という一族のことと真白とおばばが隠していること。
屋根の上より地面に降り立ち、真白と向き合う。
「ばりばりィッ…あ、空いてるよっv」
噛んだ、噛んだよ。
普通に接しようとしているのが裏目に出て逆に不自然。
思えば人間関係とかそういう類いのこと私苦手なんだよね。
あ、動物関係…か?
「そうか、よかった」
僅かだが、返答を聞いた真白が微笑んだ。
「・・・」
きっと真白は私が聞きたかったことを話すつもりなのだろう。
話してくれるのだろう・・・
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