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黒白ノ風
296 恐怖
 「フフ…」
不気味な笑いが前方から徐々に近付いてくる。
一歩一歩、私に恐怖感を与えるかのように。

 「・・・」
しかし私には恐怖という感情は新たに芽生えてこなかった。
それ以上の恐怖を目の当たりにしていたから…

大切な人がいなくなってしまうという恐怖を。
サソリはここにいるけどもう存在していない。
瞬きのしない目が、動かない手足が、減らず口をたたかない口が物語っていた。

大蛇丸は持っていた剣を私向かって静かに振り下ろす。
ガッ
その剣は標的を仕留めないまま真っ直ぐ地面へと突き刺さった。

 「アラ、まだ動く気力はあったのね。嬉しいわァ」
 「・・・」
私は無意識のうちに攻撃を避けていた。
体に染み付いた反射神経が危険を察知して避けたのか。
だけどサソリはそこに取り残されたまま微動だにしない。
…攻撃を避けて私に何のメリットがあったんだろ…
大蛇丸を倒すために避けた…?
サソリの弔い合戦でもする?
そんなことをしても帰ってはこない…
不意にこうも思った。
何も守れないのならもういっそここで…

気配を感じ、ふと顔を上げる。
 「え…?」
気付けば大蛇丸はすぐそばまで迫って来ていた。
ザシュ
辺りに肉を裂く音がこだました。

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