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黒白ノ風
168 帰宅
今日1日、疲れた。
学校も終わり、もうすぐ家に到着するところである。
睡眠不足の体はどこかおぼつかなく、ふらふらしないと歩けないような状況だ。

授業中に眠ろうと思っていたのだが、なぜだか眠れなかった。
机に顔を伏せては上げ、また態勢を変えて顔を伏せては上げ…それを繰り返すばかりなのだった。

・・・あ、家が見えた。
長年住んでいる自分の家だ。
そう思うと私は玄関を通り過ぎ、庭の方まで行く。
はっ、と我に帰る。
…何してんだろ。
家への入り口は玄関の1つしかないじゃないか。
何で庭に来てんだろ私。
…でも一回、ほんの一回だけここの壁をのぼったことがあるような。
そんな気がした。
こんなことを思っている自分が馬鹿馬鹿しいと思いつつ、私は玄関へと戻った。

ガチャ
 「ただいまー」
玄関のドアを開け放ち、私は当たり前のように言う。
 「・・・」
しかし、返事はない。
パタン
とドアがしまり、静寂が訪れる。
いつもなら満面の笑みのおばばがテンション最高潮で“おかえり”と言いながら廊下を駆けてくるのに。
買い物かな?
そんなことを思いながら私は靴を玄関に放り投げ、家にあがるのだった。

廊下もひっそりとし、私以外誰もいないということを知らせているようだった。
喉が渇いていたのでお茶でも飲もうかと思い、冷蔵庫を目指す。

 「うわっ!」
途中のリビングで私の驚きの声があがった。
リビングの机で突っ伏すおばばの姿があったからだ。

 「・・・ん?」
私の声で目を覚ましたらしいおばば。
むくりと顔をおこし、ぼーっとこちらを見ている。
 「あら、サチちゃんおはよ」
 「…おはよ?…どったの?こんな場所で寝て・・・」
私は問いた。
私が帰ってきてもおばばが眠っているのは珍しいことだったから。
 「・・・」
しかし問いたものの、おばばはまだ寝起きでぼーっとしているようだった。

…まぁいいか。
そんなことを思いながらまた冷蔵庫を目指す。
冷蔵庫からお茶を取り出し、あらかじめ用意してあったコップにそそぐ。

私はお茶を飲みつつ、リビングをふらふらと歩きながらちらちらと目につくおばばを見やった。
低血圧は寝起きずっとこうなんだよな。
そんなことを思いながらそこを通過しようとした。
 「・・・!」
…あれは・・・!
通過しようとしたのだが、おばばが突っ伏していた場所にあるものを見つけ、その場に立ち止まってしまった。
そこには私が着ていた謎の服のポケットに入っていた古びた本があったのだ。

・・・何故おばばがこれを持っている?
こんなものを読んでも何の足しにもならないということは明らか。
 「…!そうだ、サチちゃん!」
おばばが覚醒したらしい。
 「…何?」
おばばいちじるしいテンションの変化に鬱陶しさを覚えながらもめんどくさそうに聞き返す。

おばばは一息置くと
 「あなたが1日間どこで何をしていたのか知りたい?」
そう静かに言った。
 「・・・え?」
私は言葉の意味が理解できずにただ聞き返すだけだった。

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