黒白ノ風
166 循環
…目の下に濃いクマができている。
昨日はあまりよく眠れなかった。
サスケのことと、私が1日間家にいなかったことと、ブレスレットのことと…いろいろありすぎて頭の中がごちゃごちゃだったからだ。
まずは漫画の人物、サスケがここにいたのか…ということを考えていた。
少し考え、何の手掛かりもないので考えることを止める。
しかし、すぐに私が1日間家にいなかったことについて考えた。
きりがないのでそれもやめ、次は白いブレスレットのことについてであった。
そのローテーションを幾度も繰り返し、気付いたら日の光がカーテンの隙間から漏れ、朝になっていた。
そして、今にいたるわけである。
人がこんな心境の時にも太陽は当たり前のように昇る。
KYとまでは言わないが夜が明けないでほしかったものである。
あーあ、結局眠れなかったな。
ため息をつき、ベッドに横たわる。
かしゃ
と音を立て、先程まで持っていた手鏡がベッドの下へとおちた。
…割れたかも。
動かなきゃよかった。
私はゴロゴロとベッドの端っこまで転がり、手鏡を拾い上げた。
…割れてない。
とりあえずほっとする。
まぁ、対して大事なものでもないのだが。
…そういえばポケットに何か入っているような…
服のポケットに違和感を感じた。
何かごつごつとしている。
ごそごそとポケットの中を探り、中を確かめる。
…あった。
ポケットから出てきたのは見覚えのない古い本だった。
中は…変な文字がびっしり詰まっていた。
意味不明。
という言葉がぴったりの本だった。
…よく今まで気付かなかったよな。
私が着ていた見覚えのない忍者の服から更に見覚えのない古い本が出現した。
もう意味が分からない。
何なんだこの服は…
腰に付いていたポーチの中にはクナイが沢山入っていたし、手裏剣、起爆札、ご丁寧に額あてまでもが入っていた。
…どんだけコスプレ気分満喫しようとしていたんだよ。
しかも1日分の記憶が無いとか。
バン!
「おはよ!サチちゃん!!」
部屋のドアが突発的に開け放たれた。
出現したのはおばば。
「おはよ」
「もー、朝からテンション低いわねー!」
「うん、そだね」
おばばのテンションが高すぎるからそう感じるんじゃないの?
そうも言いたかったが、疲労と思考の連続で魂胆していた私からその発言が出ることはなかった。
「学校行ける?」
「…んー、今にも倒れそう」
「・・・サチちゃん、昨日からおかしいわよ?」
「私もそう思う」
「…とりあえず今日は学校休みなさい」
「そうするー」
…今日は学校休める。
昼間に眠れたらいいな。
「・・・?あら、何その本」
「…?」
「サチちゃんが手に持っている本のことよ」
「あぁ、これか。変な文字いっぱいあって意味わっかんね」
「どれどれ…」
おばばは私から本をするりと抜き取り、読み始めた。
「・・・サチちゃん、やっぱり今日は学校逝きなさい」
少しして本から目をはなし、おばばは言う。
「・・・ぇ゛」
…行かなくていいって言ったじゃん。
「しのごの言わず、逝きなさい」
おばばはそうにっこりと笑顔で告げるといつも通り、制服と私を玄関の外へと放り投げてドアの鍵を閉めた。
「…なんなんだ・・・」
私はしぶしぶと制服に着替える。
…全国のお母さんがみんなおばばみたいだったら引き込もり減るよなー。
・・・こんなこと前も思っていたような。
私は制服に着替え、ふらふらしながら学校へと登校したのだった。
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