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黒白ノ風
162 満月
「・・・サチ!サチ!!」

誰かが呼んでいる…

私は重い瞼をうっすらと開けた。
瞳に差し込むのは白い光。
白い光の周りは黒でうめつくされていた。
 「…!サチ、よかった…生きてたか」
私の目の前には、先程まで怒鳴りあっていた相手がいた。
・・・サスケだ。

目も覚醒し、辺りの様子が伺えるようになった。
同時に瞳に差し込んだ白い光は月の光だということを知る。
…まだ深夜だ。

体は…指一本動かない。
…そうだ、チャクラ切れを起こして倒れたんだっけ。
…サスケを止めようとしてチャクラを練って、倒れた。
・・・じゃあ何でサスケがいるの?
大蛇丸のところに行ったんじゃないの?

 「…何でいんのさ」
 「・・・すまない、俺が間違ってた。大蛇丸のところには行かない」
 「本当?」
 「あぁ、サチ、ナルト、サクラ、カカシ…お前らといた方が強くなれる気がしたんだ。だから俺は行かない」

…本当に行かないんだ。
サスケはこのまま木の葉の里に・・・
まるで夢のよう…



 「・・・サチよ…起きろ」
…あれ、いつ寝た?
これは・・・真白の声だ。
 「サスケ…!」
私はガバッと起き上がった。
体は…動く。
辺りの風景は先程サスケと話していた時と変わっていない。
大きな満月は私を見下ろし、あざ笑うかのように光を注いでいた。

 「サスケは行ってしまったぞ」
満月を見つめたままぼーっとしていた私に真白の突発的な発言が飛んできた。

 「そか、もう家に帰ったんだ。今度お礼しなきゃ」
 「・・・?何を言っている…サスケは大蛇丸のところに行たのだぞ?・・・それと、チャクラ切れを起こしていたので我が回復させておいた」
 「・・・?」
大蛇丸のところに“行った”?
さっき行かないってサスケが言ってて…
・・・あれは夢のようだった。
…夢?

 「ねぇ!サスケは!?」
 「さっきから里を抜けたと言っているだろう」
 「・・・・・・夢・・・だったの…かな」
サスケが里抜けしなければいいのに…って。
思っていたから…
それが倒れて気を失っている間、夢になって出てきたんだ。

 「…夢を見ていたのか」
 「・・・うん」
アスファルトの地面を見つめる私。
少しすると灰色の地面に水玉が不規則的に落ちた。
私の頬からこぼれ落ちた水玉が…
 「・・・・・・さて、おぬしも帰らねばな」
 「…うん、自分で行けるからいい」
 「サチよ、我の言ったことを覚えているか?」
 「・・・?」
 「一度きり、二度目はないと言ったな。今からでも遅くはない。おぬしは元の世界に帰れ。我もおぬしが苦しむ姿は見たくはない」
 「…!?」
私はさっと身構える。
しかし前回と同様、気付いたら金縛りにかかっていた。
体が動かない…
 「やだ!」
真白は光がまとう前右足を私の体全体にかざし、前左足は私の頭へとかざした。
 「記憶は消しておく…では」
・・・記憶を“消す”?
私は木の葉の里にいたことを全て忘れちゃうの?
 「待っ…」
必死に抵抗するもむなしく、まばゆい光に包まれて私は上昇していくのだった。

 「すまぬな…同じ過ちを繰り返したくないのだ」

満月に雲がかかり、やがて辺りは真っ暗になった。
白い兎はしばらく上を見つめ、一瞬にして刹那に消えたのだった。

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