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黒白ノ風
154 怪音
小鳥のさえずりが耳に入る。
私はうっすらと目を開いた。
目の前にはいつもと違う無機質な天井。
むくりと起き上がる。
辺りを見回すと、やはりいつもと違う室内だった。
この天井と室内を見て暁のアジトに来たんだなと再び実感させられた。

ぼーっとしながら昨日起きた様々なことを思い出す。
・・・あれ?そういえば…昨日このベッドに入って眠った記憶が無い…
おかしいな。
白と話をして、横になりながら出されたせんべいと和菓子を食べて、食べて…
…その後は?
白の部屋から出た記憶すらない。
・・・やば。
たぶん私は白の部屋でせんべいをぼりぼりと食べながら寝てしまったのだと思う。
というよりそれしか考えつかない。
 「どぅ゛ァァ…」
私の心境が声となって外へともれだす。

せんべい食べながら普通寝るか?
しかも男の部屋で…
…あーあ。
・・・まぁ、過ぎ去ったことは仕方ない。
それより、白が部屋まで運んでくれたのかな?
今からお礼しに行こーっと…
並の人間とは比にならないほどのポジティブ思考の持ち主、私であった。

お礼をしよう…と思いたち、私は部屋から出、白の部屋へと向かおうとした。
その途中、
トントン ジュー
などといった怪しげな音がアジト内の廊下に、私の耳に響いた。
何事かと耳を傾ける。
私は白の部屋そっちのけで音のする方向にゆっくりと歩き始めた。
そろそろと音を立てずに階段を下る。

階段も下り終えたころ、あるドアから音が漏れていることに気づいた。
その怪しい音が漏れるドアにぴったりとくっつき、気取られないように中を覗いた。

その中ではなんと…なんと、フカヒレが料理を作っていたのだった…!
なんてことはなく、鮫さんが普通に料理をしていた。

 「おはよー、鮫」
頑張って料理を作る鮫を見やりながら声をかけてみた。
 「…サチさんですか、おはようございます」
鮫はこちらを向かないまま返事をする。
今は料理に没頭しているのであろう。
私はシンクでできたキッチンまで行き、鮫の手元を覗きこんだ。
そこには焼けかけの、半熟でとろみのある卵焼きがジュージューと音を立てて焼けていた。
それは次の瞬間、半熟のまま鮫によって裏返された。
 「こうしますとね、普通の堅い卵焼きより美味しく感じるんですよ。まぁ好き嫌いは人それぞれですけどね」
卵を半熟のまま裏返した説明まできっちりと言ってくれた。
 「おぉ…おいしそー」
何気料理についていい勉強になるものである。
私が卵焼きに見入っていると
 「さて、できましたから味見してみますか?」
カチッとコンロの火を止めながら鮫は言った。
 「いいの!?」
 「えぇ」
鮫は半熟卵焼きを小さい皿に盛り付け、私に差し出した。
 「んじゃ、いただきまーす!」
私は少量の卵焼きを頬張った。
外はふんわり、中はトロトロ。
ダシもきいていてすごいおいしい。
 「うまい!天才!!」
 「ほめすぎですよ」
とりあえず分野はどうであれ鮫を見直した瞬間だった。
“一生ついて行きます!”と言いそうになったのは言うまでもない。

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あきゅろす。
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