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黒白ノ風
153 腕輪
入室した白の部屋はとても綺麗であった。
ベッドのシーツにはシワ1つない。
壁には真っ直ぐに立てかけてある大剣が一際目立っていた。
地面には本、ゴミなどといったものが転がり落ちていることもなく、蛍光灯にホコリがたまっているといったこともなかった。
至って綺麗な部屋である。
人が住んでいるのかと疑いたくなるほど整頓されていたのだ。

私は先程も目がついた場所にに再び目をやった。
壁に立てかけてある大剣にである。
鋭く研ぎ澄まされた銀色。
先端の中央にぽっかりと穴が空いていて柄の近くにも半月形にすり減っている箇所があった。
これは再不ちゃんが愛用していた首切り包丁である。

そういえば、波の国の任務が終盤にさしかかったころにこの首切り包丁を担いだ白が私にお礼をのべたのだった。
その後、白はこれを持ったまま旅のようなことをしていたのだろう。
おそらくそこで暁の誰かと知り合い、この暁のメンバーの一員となったのであろう。

・・・色々あったんだな。
私はごろんと地面に寝転がった。
白い蛍光灯が薄い光を放っていた。
・・・そういえば波の国の任務で終盤辺りに白に何かをもらったような…
腕に何かして貰ったよな。
私は寝転がったまま両腕を天にかざした。
右腕には何もない。
左腕にはクリーム色がかかったブレスレットがきちんとはめてあったのだった
触ると冷たく、まるでブレスレットが自らの存在感を私にしめしているようだった。

ガチャ
そんなことをしていると、部屋の主、白が帰って来た。
 「遅くなりまし・・・人の部屋で何してるんです?」
白がこう言うのも無理ない。
私の体制が…寝転がったまま蛍光灯の薄い明かりに左腕をかざしているというのが問題だったのだから。
 「…おぉ、お帰り」
私は急いで起き上がった。

 「・・・まぁ、ブレスレットについてでしたよね。簡単に説明すると…そのブレスレットは水遁を発せ・・・黄ばんでません?そのブレスレット」
白はブレスレットのことについて途中まで説明をしたものの、クリーム色になったブレスレットを見かねて説明を止めた。
そしてもっと大切に使えと言わんばかりに黄ばんでいると言われた。
このブレスレットは元々純白の白だったのだからこう言われても仕方ないのである。

 「…まぁいいです・・・そのブレスレットの効果は、水遁を発生させると凍ります。大まかな説明はこんなところですかね?」
 「凄・・・あっそうか、こいつのせいか!」
ブレスレットをごしごしと磨きながら私は思い出したかのように言う。
 「…?何がです?」
 「前に風呂入ってたら突然湯船が凍ってさ…」
あの悲劇は今でも鮮明に覚えているよ。
 「・・・お風呂に入る時、普通はブレスレットの類のものは外すものだと思いますが…」
 「金属じゃないから外さなくていいと思ってた」
 「・・・フフ、やっぱり面白い方ですね」
白は突然微笑み出した。
 「わー、白…いきな笑って怖いよ…」
…白の笑いのツボが分からない私である。
 「・・・まぁ、一度試してみてはどうですか?」
白は1つ咳ばらいをするとブレスレットの効果を試すように促した。
 「んじゃあやってみるわ」
そう言うと私はチャクラを練り、そのチャクラを水の性質に変換。
そしてそれを左手の手の平より放出した。
放出された水は大気に触れた瞬間、
パキキッ
と音を立て、凍った。
カランカラン
氷となった個体が地面に落ちては割れる。
氷が割れた欠片は綺麗に透き通っていて辺りの光を吸収していた。
 「氷だ…」
感動して、これしか言葉が出なかった。
 「氷ですね」
白は割れ、透き通った氷を見入っていた。
 「…うん!ありがとう!!」
私は突然白の手をがしっと掴み、上下にぶんぶんと振った。
感動したのだからしょうがない。

この後、白とは談笑話しをし、久しぶりに話し合い、初めて笑い合った。
気付いた時、外はもうすでに深夜に染まっていたのだった。

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